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2017.10.20 特別寄稿

中国経済崩壊のシナリオ3:新中国誕生シナリオ

実業之日本フォーラム編集部

実質的な経済成長が減速期に入っていると思われる今、中国は国家による投資主導の成長モデルから、個人消費主導型の成長モデルへの転換が求められている。しかし、社会保障制度への不安や流動性への制約など、中国が構造的に抱える諸問題が足かせとなって、個人消費の拡大はなかなか進まない現状がある。このままの状態が進めば、他国を巻き込んだ金融危機の発生と、外貨準備減少ループは際限なく続くと思われる。

こうした状況を踏まえて、中国政府が随時訪れる危機にどのように対処するかによってシナリオが大きく分岐することを想定し、「ベースシナリオ」「ソ連崩壊型シナリオ」「新中国誕生シナリオ」「内戦シナリオ」という4つのシナリオを想定し、それぞれが世界経済や日本経済に与えるインパクトについて考察していきたい。

本稿ではシナリオ3「新中国誕生シナリオ」をご紹介する(※)。

※一つ目の「ベースシナリオ」は、二つ目の「ソ連崩壊型シナリオ」は別途「中国経済崩壊のシナリオ1:ベースシナリオ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」「中国経済崩壊のシナリオ2:ソ連崩壊型シナリオ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」参照。


独裁勢力台頭で閉鎖経済へ


急進的で独裁的な勢力が政治闘争に勝利し、外資系資本や資本家の資産を接収するような政府が誕生することも考えられる。国共内戦に勝利した毛沢東が資産没収を通じ、新国家の建設を進めたようなイメージであり、支配階級の力がより強くなる。一時的には中国は世界経済から完全に切り離された形となり、人民元も他通貨との交換が停止され、経済は独自の歩みを余儀なくされるだろう。

そして、徐々に市場を開放していくブロック経済が進むことになる。地政学的には、中国包囲網が強固になり、諸外国との軍事衝突の危険性が高まっていくだろう。国民の統一にはナショナリズムを煽るのがもっとも効果的であるが、このシナリオの場合も、さらなるナショナリズムの高まりが予想されるためだ。

そうした状況下で、原油市況の急伸などで景気低迷下における急速なインフレが進む国も出てこよう。また米国などでは防衛特需の発生も想定される。日本のマーケットにおいては、避難通貨としての円買いで短期的に急速な円高が進行し、株価も先行き不透明感から暴落となろう。

しかし、長期的には米国一強支配によるドル高で、輸出産業の復活も想定される。グローバル経済は、中国の資産凍結などによる損失が相次いで表面化するほか、対中貿易の消滅によって、各国の景気情勢も一斉に冷え込むことになる。また地政学リスクの急速な高まりから、世界各国で投資抑制の動きなども広がる可能性があろう。


(つづく~「中国経済崩壊のシナリオ4:内戦シナリオ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)



フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済では第4次産業革命にともなうイノベーションが日本経済にもたらす影響なども考察している。今回の中国についてのレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年春号の大特集「中国経済崩壊のシナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。

実業之日本フォーラム編集部

実業之日本フォーラムは地政学、安全保障、戦略策定を主たるテーマとして2022年5月に本格オープンしたメディアサイトです。実業之日本社が運営し、編集顧問を船橋洋一、編集長を池田信太朗が務めます。

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