国際協力銀行が発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告-2020年度海外直接投資アンケート調査結果-(第32回)」によると、2020年度は、昨年から継続している米中貿易摩擦に加え新型コロナの影響を大きく受ける中で、海外事業は急減速し、新型コロナ前の水準回復は2023年以降になる見通しだと示された。
海外直接投資アンケートの調査期間は2020年8~11月で、530社が回答した。今回の調査では、海外生産比率は33%台と、10年ほど前の水準まで急低下しており、その回復は今のところ2023年以降が見込まれている。また、今後の海外展開への強化・拡大の意欲も59%と、リーマンショック後(65.8%)を下回り、32年前の調査開始以来で最も低い水準を記録した。ただし、リーマンショック時と同様に、新型コロナへの対応状況や世界各国の景気回復次第では、再び強化拡大姿勢が回復することが見込まれる。
今後3年程度の有望な事業展開先国については、中国がインドを抜き再び首位に返り咲いた。日本企業は中国を引き続き機会と捉えているようだ。「新型コロナが明暗を分け、感染拡大を抑えつつ経済活動を再開させるのが早かった中国と、長期間のロックダウンにより景気減速が深刻化しているインドとの間で首位が逆転した」と分析されている。ASEAN地域では、ベトナムが昨年に続き有望視されたほか、バングラデシュなど、これまで目立たなかった国が注目を集めた。
今後10年程度の長期有望国については、インドが11年連続で首位となった。中国の順位は2位で変わらなかったが、得票率は3.7ポイント増加し、インドとの差を縮めた。米中摩擦や新型コロナのサプライチェーン再編の受け皿としてここ最近人気が高まったベトナムは、中期的有望国で得票率を上昇させた一方で、期待の継続性が疑問視されたためか、長期的有望国の調査では得票率を落とした。
米国は、ここ数年は大きな順位の変化が見られない状況が続いていたが、今年は大きく得票率を伸ばし4位となった(昨年比+6.8ポイント)。この点について「トランプ政権の政治運営の不透明性や新型コロナウイルスの影響から目先の不安感はあるものの、長期的にはやはり市場規模の大きさは無視できない」という意見が聞かれた。
(株式会社フィスコ 中村孝也)