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2021.01.19 外交・安全保障

中国で相次ぐ社債デフォルト、「暗黙の政府保証」の是正へ

中村 孝也

中国企業のデフォルトは2021年、過去最悪だった昨年を上回る公算が大きいとみられている。中国では、昨年11 月から社債のデフォルトが急増しており、中でも国有企業のデフォルトが多い。国有企業の社債デフォルト増加の背景として、中国経済がコロナ禍からの回復軌道に乗ったことで、中国政府が国有企業の資金繰り支援を縮小したことが挙げられる。

Bloombergのデータによれば、2020年にはオンショアおよびオフショアで中国企業約39社が300億ドル相当近い債券の不履行に陥り、金額ベースでは2019年を14%上回った。オンショアでは1,370億元と前年の1,420億元を下回ったが、オフショアでは39億ドルから86億ドルに急増した。中国人民銀行(中央銀行)が一段と金融緩和姿勢を後退させれば借り換え圧力に直面する企業が増えるとの指摘も見られる。償還期限が到来する債券も多いことから、2021年のデフォルト総額は前年比で10~30%増加すると見られている。

オンショアでは政府との関係を持つ企業5社が初めてデフォルトした。国有石炭会社の永城煤電控股集団の社債は、AAAの格付けを取得していたが、発行後1カ月足らずで元本と利息の支払いができなくなった。デフォルトした債券の9割以上は返済不能となった時点の格付けが「A」「AA」「AAA」であったことから、格付けの信頼性も問題視されている。

これまで中国では、利払いに窮した国有企業に対して中央・地方政府が全面的に資金支援してきたため、国有企業にはいわゆる「暗黙の政府保証」があるといわれてきた。暗黙の政府保証により、一部の国有企業は返済能力に見合わないほどの過剰債務状態にあると見られるが、中国政府が国有企業の資金繰り支援を縮小したことで、国有企業の社債デフォルトが増加しつつある。こうした状況は、国有企業の再編などを通じて2021年の景気押し下げ要因となる一方で、長年の懸案である「暗黙の政府保証」の是正という構造改革の前進と捉えることもできよう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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