QaurumのGold Valuation Frameworkでは、経済シナリオに対応した金価格のイメージが示されている。以下ではデフォルトで設定されている4種類のシナリオを紹介するが、今後の経済の推移によって、金価格にも相応の差が生じる可能性が示唆されている。
今後5年間で年率22.4%の金価格上昇を見込むのが「Deep Recessionシナリオ」である。デフォルトで設定されているシナリオの中では、もっとも金価格にとって好ましいシナリオである。「感染症による経済への影響が深刻で長期化する」という想定の下、(1)2023年まで世界経済の水準が感染症前の水準に回復しない、(2)先進国の経済が2019年水準に回復するのは2026年まで後ずれする、(3)低金利政策は長期化する、(4)クレジットスプレッドは2024年まで高止まりする、といったシナリオである。
また、「EM Downturnシナリオ」も年率19.2%上昇と、こちらも金価格にとっては好ましい環境を提供するようだ。こちらは「感染症による経済への影響はベースケースよりも悪化する」という想定の下、(1)中国経済はマイナス成長、(2)商品価格の下落も新興国経済に悪影響を与える、(3)ただし政府は金融政策で早期に対応するため、2021年には経済は回復に転じる、といったシナリオである。
一方、「Swift Recoveryシナリオ」では年率8.6%の上昇が見込まれている。「世界のGDPは2020年に4%減少する」という想定の下、(1)2020年前半の景気は極端に弱いが、2020年後半には急回復を遂げる、(2)金利水準は2024年までゼロ近辺で据え置かれる、といったシナリオである。
そして、「US Corporate Crisisシナリオ」では年率2.2%の上昇にとどまる見通しである。設定されているシナリオの中では、もっとも金価格にとって好ましくないシナリオである。「米国企業がダメージを受ける」という想定の下、(1)2020年の株価が45%下落する、(2)ドル安で輸入価格が上昇し、企業のマージンが悪化する、(3)企業、投資家の信頼感が悪化する、(4)FRBの金融政策は政府債が中心となるため、社債スプレッドは拡大する、(5)ただし、支援的な財政政策が景気を支援し、2021年の株価は19%上昇、クレジットスプレッドも縮小に向かう、といったシナリオである。
(株式会社フィスコ 中村孝也)