2020年11月15日、東アジアを中心に15か国が参加するRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が署名された。経済連携協定については、これまで各種の経済分析が行われている。
「経済連携協定の効果分析」は、EPA相手国への貿易実績を分析したものである。EPA相手国への輸出実績をみると、全EPA相手国の平均値は上昇傾向にあり、EPA相手国からの輸入実績をみると、全EPA相手国の平均値は締結後7年目までは上昇傾向にあるが、その後は、横ばいから減少へと転じている。もっとも、輸出も輸入も相手国によって動向が大きく異なるとのことである。一方、EPA適用分等の輸入シェアをみると、2017年の全輸入額に占めるEPA適用輸入額の割合は4.4%にとどまっており、EPA適用輸入額は大きく変動していない。このことから、これまで締結したEPAが日本の輸入全体に及ぼした影響は限定的と結論付けている。
一方、「経済連携協定・自由貿易協定(EPA/FTA)の効果」は、二国間のFTA締結状況は有意にプラスであり、FTA締結が貿易量を増大させると結論付けている。FTAの貿易への影響については、FTA加盟国間での貿易が拡大する貿易創出効果と、加盟国の輸入が効率的な非加盟国から非効率的な加盟国にシフトすることによる貿易転換効果があり、貿易創出効果は経済厚生を向上させるのに対して、貿易転換効果は経済厚生を低下させる可能性がある。その上で、分析結果は「NAFTA、EU、AFTA及びEFTAについては貿易創出効果が認められる。貿易転換効果は比較的小さなものであった」とされている。
「自由貿易協定(FTA)の経済的効果に関する研究」では、「先進諸国同士のFTAでは多くの商品について貿易創出効果が認められたのに対し、発展途上国同士のFTAでは貿易転換効果が認められた」とされた。これは「発展途上国の関税が高かったことが背景」と説明されている。
(株式会社フィスコ 中村孝也)
写真:ロイター/アフロ