内閣府が2020年11月6日に発表した経済財政白書では、新型コロナウイルスの日本経済への影響を考察し、家計部門の側面から、感染症の拡がりによって下押しされた経済状況について言及している。
消費支出の変化を、(1)価格上昇かつ数量減少(供給要因)、(2)価格低下かつ数量増加(供給要因)、(3)価格上昇かつ数量増加(需要要因)、(4)価格低下かつ数量減少(需要要因)の4つのカテゴリーに分類して分析すると、2020年は年初から4月まで供給要因と需要要因の割合がおおむね一定で推移している中で、供給要因において(1)(価格上昇かつ数量減少)、需要要因では(4)(価格低下かつ数量減少)の割合が上昇した。一方、5月以降は需要要因、中でも(3)(価格上昇と数量増加)の割合が高まっている。
家計の消費支出全体では、2020年1月から4月にかけて価格は低下し、5月以降は上昇した。全体の動きにはガソリン価格といった供給要因の影響もみられるが、品目数の割合の動きと同様、相対的には需要要因の影響が強かったと見られる。
価格の動きを品目別に見ると、燃料を含む「交通」の価格は、2月から4月にかけてガソリン価格の低下による供給要因によって低下した。5月に供給要因での下振れは弱まったが、緊急事態宣言明けとなる6月に需要要因で「交通」の価格が上昇した。「食料」価格は外出自粛や内食機会の増加を反映して、3月と4月に需要要因がプラスに寄与し、6月にマイナス寄与へと転じている。「家具・家事用品」価格は、家電販売が好調となった6月に上昇した。これらが全体の価格変動をもたらしたという内容である。
(株式会社フィスコ 中村孝也)