IMF(国際通貨基金)のデータによると、世界の外貨準備高に占める米ドルの割合は、長期的に低下基調を辿ってきたが、コロナショック直後の2020年第1四半期に61.79%と前四半期比から1%ポイント強上昇した。しかし、その後の落ち着きもあり、2020年第2四半期に61.26%と、再び低下へ転じている。
コロナショックを境に外貨準備高を減らした国は、トルコ、サウジアラビアなどである。一方、イスラエル、スイスでは自国通貨安介入の結果、外貨準備高が増加している。新興国の脆弱性を判断するためには、IMFが公表しているAssessing Reserve Adequacyなどが使われることも多い。これは各国に必要な外貨準備高の目処として「輸出×10%+ブロードマネー×10%+短期債務×30%+その他債務×20%」などで算出されたものである。外貨準備高がAssessing Reserve Adequacyを下回る国は小国に多いが、上記のトルコもその中に含まれている。中国は外貨準備高の水準は高いものの、Assessing Reserve Adequacyとの比較で十分な外貨準備高と評価されていないようだ。
新興国の脆弱性を判断するために、「外貨準備高―ドル債務」と「経常収支」で新興国を4つのカテゴリーに分類した。経常赤字であり、外貨準備高よりもドル建て債務が大きく、経常収支が赤字という脆弱性が高い国は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、インドネシア、メキシコ、南アフリカ、トルコ、ウクライナである。外貨準備高よりもドル建て債務が小さいが、経常収支が赤字の国は、チェコ、インド、ポーランドなどである。このうちインド、ポーランドは相対的に経常収支赤字の水準が高いことから、脆弱性の高まりが懸念されよう。
(株式会社フィスコ 中村孝也)