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2020.10.23 外交・安全保障

「アジアの金融ハブとしての国際金融センターの確立」を目指す金融庁税制改正要望

中村 孝也

9月30日、金融庁は「令和3年度(2021年度)税制改正要望」を公表した。主な要望項目として「アジアの金融ハブとしての国際金融センターの確立」、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応」、「税制上の手続のデジタル化の推進」、「保険」が掲げられている。

要望の最初の項目には「アジアの金融ハブとしての国際金融センターの確立:国際金融ハブ取引に係る税制措置」が選ばれた。要望事項は「国際金融ハブ取引について、金融事業者・高度金融人材が日本に参入しやすくするための税制上の措置を講ずること」であり、「考えられる案」として、(1)運用会社等の役員報酬の損金参入条件の緩和(法人税)、(2)海外からの高度金融人材に係る国外資産についての特例(相続税)、(3)運用成果を反映する持ち分の課税関係の整理(所得税)、が挙げられた。

最初の項目というのは優先順位の高さを表すと思われるが、必ずしもそれが年末の与党税調で受け入れられるわけでもない。例えば令和2年度(2020年度)の主な要望項目は「資産形成を支援する環境整備」、「簡素で中立的な投資環境の整備」、「保険・特別法人税」であり、最上位の要望項目として「NISAの恒久化・期限延長」が掲げられていた。結果としてつみたてNISAの延長は決まったものの、「NISAの恒久化・期限延長」は受け入れられたわけではない。一般NISAは、積み立てを行っている場合には(2階建ての制度に見直した上で)5年延長、非課税期間20年間のつみたてNISAは5年延長、(利用が限られる)ジュニアNISAは延長しないことになった。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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