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2020.10.20 外交・安全保障

コロナショックで悪化した需給ギャップとスタグフレーションの足音

中村 孝也

直近のインフレ率は、先進国では前年比1%程度、新興国では2%程度となっている。コロナショックを受けて、インフレ率は一時的にマイナス圏に突入したが、その後の景気回復にあわせて持ち直してきた。もっとも現状ではコロナショック前には届いていない。

IMFによると、多くの国のGDPギャップは需要不足の状態にある。日本や米国のGDPギャップはマイナス3%程度であるが、ギリシャ、スペイン、スロバキアなどでは需要不足が顕著である。総じて需給ギャップは、数年かけてゼロに近づいていくことが見込まれているが、プラス転換までは見込まれておらず、需給面からくるデフレ圧力は根強く残りそうだ。

141ヵ国のインフレ率の中央値は2.1%のプラスであるが、ばらつきが大きい。115ヵ国が前年比プラスである一方、25ヵ国がマイナスとなった。中でも、スーダン(+64.3%)を筆頭として、イラン、ハイチ、エチオピアなどのインフレ率は20%を上回っており、スタグフレーションの兆候を見せている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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