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2020.10.20 外交・安全保障

ストレステスト活用の重要性

中村 孝也

10月6日に発行された日銀レビュー「共通シナリオに基づく一斉ストレステスト」では、日本銀行と金融庁が開始した「共通シナリオに基づく一斉ストレステスト」について、概要と実施に至った背景、欧米諸国との制度運営の違い、ベンチマーキングや水平レビューといった分析が可能となる意義等について整理している。

「一斉ストレステスト」というのは今回が初めてである。日本銀行と金融庁は、金融機関自身が行っているストレステストを前提としてその内容を個々に検証し、日本銀行では、金融システム全体の安定性を分析・評価する観点から、自らのモデルを用いてマクロ・ストレステストを実施してきた。

第1回の一斉ストレステストは、昨年10月の共通シナリオの策定、昨年12月初に今回の対象である三菱UFJFG<8306>、三井住友FG<8316>、みずほFG<8411>、三井住友トラストHD<8309>、農林中央金庫への共通シナリオ提示、本年3月末までにストレステストの結果提出、という流れで進められた。また、並行して日本銀行と金融庁においても、同じシナリオを用いて対象先のストレステストが進められた。4月以降、日本銀行と金融庁は結果の比較・検証分析を合同で実施し、7月半ばにかけて対象先へのフィードバックが実施された。

一斉ストレステストのベースライン・シナリオは昨年10~11月時点の経済状況を前提に策定される一方、テールイベント・シナリオは「内外の経済情勢がリーマンショック時並みに悪化する状況」を想定し、金融市場では株価下落と円高・ドル安、内外金利の低下が生じるとともに、海外経済も当時と同様に大幅に減速し、需給ギャップも悪化すると想定された。次回の一斉ストレステストの共通シナリオについては、感染症流行を踏まえたシナリオとして、どのような金融経済情勢を想定すべきかが最大の課題となっている。

初めての一斉ストレステストが実施されたが、その活用については「わが国では、欧米諸国のように、当局が特定のシナリオを用いて実施するストレステストの結果を規制・監督上の追加的な自己資本賦課と紐づける枠組みとはなっていない」との説明が加えられた。「金融システムが安定を維持している現在の状況下では、そうしたマクロのテスト結果に加えて、個別対象先の一斉ストレステストの結果を公表するメリットは乏しい」というスタンスに変わりはないようだ。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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