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2020.08.31 外交・安全保障

フォーリンエンジェル懸念が高まるインド

中村 孝也

2020年は既に、レバノン、エクアドル、アルゼンチンの3ヵ国でデフォルトが発生した。3~4月にはコロナショックを背景として新興国の格下げの動きが集中したが、5月以降はそういった動きも小康状態にある。ただ、新興国を取り巻く環境は総じて厳しく、トルコのように通貨に下げ止まりが見られない国も散見される。その中で(投資適格から投機的格付に転落する)フォーリンエンジェルの候補と意識されている国の一つがインドである。

インドの貿易収支は2010年~2019年の平均で1,492億ドル/年の赤字である。貿易赤字構造は、原油の純輸入国であることに加え、国内消費増加や外国からの直接投資に伴う資本財輸入増加などを背景に輸入が急増したことによる。経常収支の赤字が450億ドル/年と貿易赤字に比べるとさほど大きくはないのは、ITサービス輸出に支えられてサービス収支が黒字であることと、在外インド人労働者の本国送金により第二次所得収支が黒字であることを受けたものである。一方、直接投資が274億ドル/年の純流入、ポートフォリオ投資は101億ドル/年の純流入となっており、恒常的な経常赤字は資本の流入によってファイナンスされてきた。対外純負債は2006年以降、増加基調を辿っており、過去10年間の対外純負債の増加は0.3兆ドルに上る。

恒常的な経常赤字にもかかわらず、インドの外貨準備高は増加基調が続いており、2000年から2019年までで4倍に増加した。足元でも増勢を維持しており、外貨準備高の水準に不足感があるわけではない。ただ、既往の外貨準備の増加はホットマネーに支えられてきた側面も大きい。コロナショックで在外労働者からの本国送金への悪影響も必至であるため、経常赤字は当面継続する可能性が高い。経常赤字の水準が当時ほど高かったわけではないが、アジア通貨危機との類似性も若干想起されよう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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