直近の企業決算では、コロナショックを受けて、多くの企業が借入を増やし、流動性を積み増すという動きが確認された。国際決済銀行(BIS)の「The rise of zombie firms: causes and consequences」では「ゾンビ企業の分析」を行っている。ここでのゾンビ企業は「一定の期間について利益が利払いを下回る企業」と定義されている。14ヵ国の先進国を対象とすると、広義のゾンビ企業の構成比は1980年代後半の2%から2016年には12%に、狭義のゾンビ企業の構成比は同期間に1%から6%に、それぞれ上昇したと分析している。
BISはゾンビ企業増加の背景として、各国の低金利政策を指摘している。過剰な金融緩和が、採算性の低い企業を存続させてしまったという見方である。そして、ゾンビ企業の生産性は低いことから、ゾンビ企業の増加が経済に悪影響を与えている可能性が指摘されている。コロナショックで企業の収益性が低下する一方、流動性支援のために企業債務が拡大しているのであれば、生産性が低い企業の割合が高まり、経済パフォーマンスが悪化することが懸念される。
なお世界銀行も、自然災害、戦争、金融危機や深刻な不況などの経済混乱は労働生産性の低下を伴う傾向があると指摘し、コロナショックによる生産性低下を懸念している。パンデミックがどの程度続くかという不確実性は、投資に重荷を与え、貿易と外国直接投資に悪影響を及ぼす。過去のパンデミックは、3年後の労働生産性を累積で4%押し下げ、永続的な傷跡を残したと指摘している。
(株式会社フィスコ 中村孝也)