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2020.07.20 外交・安全保障

中国エネルギー自給への遠い道

中村 孝也

様々な観点で米中対立が激化しているが、中国経済の自立・存続を占う上で重要な論点が「エネルギー自給」である。「中国のアキレス腱、エネルギー自給は可能か?」では、2016年の中国のエネルギー自給率は80%であり、エネルギーの国内自給達成は難しい点を議論したが、今回はその後の状況を確認してみよう。

2019年の中国の石油消費は前年比5.1%増、天然ガス消費は8.6%増であった。コロナショックの影響から2020年前半は大きく減速した中国経済であるが、4~6月期のGDP成長率(前年比)はプラス3.2%と、景気回復過程を辿っている。一時的に下振れしたエネルギー消費も、足元では回復過程にあると見る方が妥当であろう。

一方、2019年の中国の石油、天然ガスの輸入はともに9.2%増となった。2019年の中国の石油輸入依存度は84.1%、ガス輸入依存度は43.1%。石油輸入依存度はやや高まったが、ガス輸入依存度はほぼ横ばい。石油は44%を中東から、18%をアフリカから、16%をロシア・CISから輸入する一方、天然ガスは35%をロシア・CISから、30%をオーストラリアから、10%を中東から輸入する。

石油の地域別輸入構成比は大きく変動していない。「抜群の効果を発揮する「債務の罠」」でも論じた通り、中国と中東との関係は良好に見えるが、輸送の過程でインド洋、南シナ海を航行しなければならないという点で、リスクを抱えたままであることに変わりはない。天然ガスは中東、ロシア・CISの構成比がやや低下する一方、オーストラリアの構成比がやや拡大した。オーストラリアへの輸入依存度上昇については、最近の二国間関係の悪化が影響するかは興味深いところであろう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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