中国のエネルギー自給率は2016年時点で80%であるが、石油は63%を輸入に依存する。中国の原油輸入は、2009年の2.5億トンから2018年は4.6億トンに増加した。中東から44%、アフリカから19%、ロシア・CISから16%を輸入している。
中東やアフリカからの輸入は、インド洋、南シナ海を航行する必要があるが、現段階で同地域はアメリカの支配下にあるため、米中関係がこれ以上緊張すると、調達環境に影響が出てくる可能性がある。そのため中国は、シーレーンでのプレゼンスを高める行動を取るとともに、ミャンマーやパキスタンなどからバイバスすることを模索している。また、ロシアからなど内陸からの調達により、シーレーンを回避する調達の多様化を進めている。
結果として、天然ガスの輸入は2009年の76億㎥から2018年には1,213億㎥へと大幅に拡大した。そのうち26%をオーストラリアからのLNG輸入で、38%をロシア・CISからのパイプライン経由での輸入で実現し、パイプライン建設に注力している。ミャンマー、中央アジアA~C線に加えて、2019年12月にはロシアからの「シベリアの力」が開通した。シベリアの力で年間380億㎥のガスが中国に供給されるが、2本目となる「シベリアの力2」の事業化に向けて調査開始が発表されている。こちらの年間輸送能力は最大500億㎥とされている。
エネルギー自給率が80%ということは、エネルギー消費を20%抑制することができれば、マクロ的にはエネルギーの国内自給が達成できる。これは年率4%程度のスピードでエネルギー消費を拡大させてきた中国にとって、そう簡単ではない。2020年1~2月の電力消費は前年比7.8%減少した(3月は同4.2%の減少)が、コロナ禍でもこの程度である。それを上回る電力消費削減は容易ではない。単純化すれば、経済規模を20%縮小させるか、エネルギー効率を20%改善させるか、あるいはその組み合わせが必要となる。
ただ、トップダウンの政策が浸透しやすい国でもあり、全く不可能というわけでもないのかもしれない。非常事態であれば、なおさらである。それが実現できれば、シーレーンへの依存度を引き下げることができるだろう。底値からはやや反発したが、年初来のエネルギー価格下落も、もし継続するのであれば、少ない外貨でより多くのエネルギーを調達することにつながるだろう。
(株式会社フィスコ 中村孝也)