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2020.06.19 外交・安全保障

新型コロナ第二波で経常収支が改善する国、悪化する国

中村 孝也

6月10日、OECDは経済見通しを改定した。今回は通常とは異なり、2種類の前提のもとでの経済見通しが公表された。ウイルスが制御可能になるというシナリオ(感染拡大の単発シナリオ)のもとでは、2020年の世界経済成長率はマイナス6.0%と予想されているが、2020年末までに世界的に新型コロナの第二波が襲来するというシナリオ(双発シナリオ)ではマイナス7.6%と予想されている。2021年については、単発シナリオではプラス5.2%に回復する一方、双発シナリオではプラス2.8%にとどまる見通しである。

2種類のシナリオは、「どちらも同程度に起こりうるシナリオ」という位置づけである。第二波の襲来は全ての国にとって経済的に悪影響を及ぼすため、自明のことではあるが、双発シナリオにおける予想経済成長率は、単発シナリオのものよりも厳しいものとなる。

一方、全世界の経常収支を合算するとゼロであるため、第二波の襲来によってどの国も経常収支が同じ方向で影響を受けるわけではない。2021年のOECD全体の予想経常収支(対GDP比)は、単発シナリオ、双発シナリオともに0.1%の赤字予想で変わらない。しかし、個々の対象国全体に目を移せば、第二波が従来の不均衡を若干改善させる構図のようにも見える。

例えば、中国は単発シナリオでは0.9%の黒字予想であるのに対して双発シナリオでは0.8%の黒字予想、米国は単発シナリオでは2.5%の赤字予想であるのに対して双発シナリオでは2.2%の赤字予想、日本は単発シナリオでは3.7%の黒字予想であるのに対して双発シナリオでは3.5%の黒字予想である。第二波によって経常黒字国の中国と日本では黒字幅が縮小する一方、経常赤字国の米国では赤字幅が縮小し、不均衡の改善に寄与する見通しである。

現時点でさほど大きな変化が予想されているわけではないが、第二波の襲来によって経常収支の改善が見込まれているのはチェコ、チリ、トルコ、オランダ、カナダなど、悪化が見込まれているのはアイルランド、エストニア、デンマーク、ドイツ、ニュージーランドなどである。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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