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2020.06.18 外交・安全保障

国家安全法と香港の事業環境

中村 孝也

国家安全法を巡る米中対立の激化を受けて、香港の事業環境に対する評価が厳しさを増している。2020年3月公表のZ/Yenによるグローバル金融センターランキングでは、香港の順位は前回(2019年9月)の3位から6位に低下した。また、6月16日公表のIMD世界競争力ランキングでも、2位から5位に順位を下げている。

米国商工会議所は、「国家安全法と香港の特別な地位」について在香港の米国企業180社に調査を行ったところ、83%が国家安全法を懸念し、60%が香港での事業に悪影響を与えると回答した(調査期間は6月1~2日)。主な懸念点として、法の範囲と強制の曖昧さ(64%)、国際ビジネスセンターとしての香港の地位が危うくなること(63%)、更なる社会的緊張の高まりが香港の安定的な事業環境を危うくすること(53%)、などが挙げられた(「香港ドルの安定性」という回答も存在したようである)。

香港の優遇政策見直しを受けて、74%が「様子見」と回答する一方、投資を削減(18%)、香港と米国間の出張を削減(8%)、香港のハブ機能使用を回避(6%)、という回答も見られた。71%が「香港から移るつもりはない」と回答する一方、「個人的に香港を離れるつもりはない」と回答したのは62%にとどまる。香港の事業環境については、48%が「中長期に悲観的」と回答し、34%が緊急時対応計画を作成したと回答している。

現地では資金を海外に移す動きは散見されるようだが、慌てて海外に事業を移管するような雰囲気は乏しいようだ。香港の代替先としてシンガポール、ニュージーランドなどが挙げられることが多いが、まだ具体策が発動されたわけでもないため、現時点では香港の優位性が上回る面もあるのだろう。米国上場の中国企業が香港で資金調達を行うケースが増えたが、外資系にとってそれが短期的に事業機会となっている面もありそうだ。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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