各国中央銀行のなりふり構わぬ積極対応が奏功し、金融市場の緊張感はやや和らいだ。3月15日には、FRB、日銀、ECBなど主要6中銀による「通貨スワップ協定」の枠組みの強化が発表され、3月19日にFRBは、スワップラインの取り決めに新たに9行の中央銀行を加えた。この措置も金融市場の安定化に貢献が大きかったと思われるが、今回はFRBを中心とした「通貨スワップ協定」について整理してみたい。
2007年12月12日、欧州のドル流動性不足に対応するため、FRBはECB、スイス中央銀行との通貨スワップ協定締結を発表した。リーマン・ブラザーズ破綻から3日後の2008年9月18日には、日銀、BOE、カナダ中央銀行も加わり、FRBと5中銀とのスワップラインに再編成された。2008年9月24日には、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、10月28日にはニュージーランド、10月29日には、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポールの中央銀行がFRBとのスワップライン締結を発表した(今回スワップラインの取り決めに加えられた9中銀は上記の中央銀行である)。
上記のスワップラインは2010年2月1日に期限満了となったが、FRBと5中銀との間のスワップラインは2010年5月に再締結された。欧州債務危機を経て、ドル以外の通貨も相互に融通しあう多角的なスワップラインへ強化され、2013年10月31日に恒久化された。引出可能期限、引出限度額はともに設定されていない。日本を含めた主要先進国間の取り決めは、他と格が大きく異なる。
一方、FRBと9中銀が新たに締結した取り決めでは、「少なくとも6ヵ月間」という期間および貸出上限が設定されている(デンマーク、ノルウェー、ニュージーランドが300億ドルまで、それ以外の6中銀は600億ドルまで)。
日銀がFRBからスワップラインでドル資金を調達する場合には、約定日の市場実勢レートで、日銀が円を渡し、FRBからドルを受け取り、FRBは日銀内にあるFRBの口座に円を保有し、日銀はNY連銀内にある日銀の口座にドルを保有することになる。同時に、日銀は将来の決まった日に、FRBに同じレートでドルを返済し、円を受け戻す契約を行う。原則的に金利以外の損益は発生せず、FRBが負うのは日銀に対するソブリンリスクのみであり、為替リスクや日本の金融機関の信用リスクを負うわけではない。そのドル資金は、日本国内でのドル資金供給オペで、応札した金融機関(在日外国金融機関を含む)に提供される。日銀のオペでドル資金を得た金融機関の信用リスクは日銀が負うことになる。
(株式会社フィスコ 中村孝也)