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2020.05.21 外交・安全保障

コロナショックと企業の資金繰り状況

中村 孝也

5月15日に東京商工リサーチが公表した「第4回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」(有効回答:21,741社、調査機関:4月23日~5月12日)では、「政府の支援策「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「セーフティネット貸付・保証」は利用しましたか?」という質問に対して、10.7%の企業が「利用した」、43.4%の企業が「今後利用する可能性がある」と回答した。「利用」あるいは「利用の可能性」と回答したのは、大企業の23.4%、中小企業の59.8%に上る。

日本政策金融公庫の4月融資実績は、国民生活事業が127,675件、1兆700億円、中小企業事業が8,041件、6029億円であった。国民生活事業では2月に1,483億円、3月に3,200億円、中小企業事業では2月に794億円、3月に1,522億円の融資が行われており、4月になって緊急融資が本格化した。 5月20日、政策投資銀行は、大企業や中堅企業からの資金繰り要請が約2,000件、2.5兆円に上ったと公表した。5月15日時点での商工中金の危機対応業務は、融資実行が 8,098件、5,839億円に上る。4月末の全国銀行貸出は前年比4.0%増と、3月末の同2.2%増からやや加速した。

4月30日に金融庁が公表した「貸付条件の変更等の状況について」によると、3月10日~3月末までに26,592件の融資条件変更の申し込みがあった。3月末までに9,996件の審査が終了し、9,963件で条件が変更された一方、審査中の16,367件については4月中旬までに7割が実行された。住宅ローンの返済条件見直しについては、1,028件の変更申し込みがあった。3月末までに審査を終えたのは152件で、このうち144件で条件が変更された一方、審査中の850件は4月中旬までに6割が実行されたとのことである。

もっとも依然として資金の逼迫感は強いようだ。前述の東京商工リサーチによる調査でも、「現在の状況が続いた場合、何カ月後の決済(仕入、給与などの支払い)を心配されますか?」という質問では、全体の3分の1に相当する7,299社が資金繰りに不安があると回答し、「不安になる時期」としては、40.9%が「3カ月以内」とした。「3カ月以内」としたのは、大企業のうち30.3%、中小企業のうち41.5%の企業であり、中小企業の中でも、農・林・漁・鉱業、小売業、サービス業他では、資金繰りに逼迫感が強い企業の割合が多い。

このように資金繰りの逼迫感が強い状況の中で、「政府系金融機関によるトリアージ・命の選別【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」で指摘した通り、着実にトリアージが執行されている点も見逃せないだろう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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