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2020.04.21 外交・安全保障

新型コロナウイルス感染者数ピークの推計

実業之日本フォーラム編集部

「全国」「東京」「大阪」の3地域を対象として、4月8日以降に「人同士の接触制限」が実施されたことによる新型コロナウイルス感染者数への影響を推計した。人同士の接触制限は「制限無し」、「50%減」、「80%減」という3パターンを想定した。推計には、感染症推計に一般的に活用される「SIRモデル」を採用している。

感染者数の推計式は「翌日感染者数=当日未感染者数×パラメータb」とした。パラメータb は、実質的に本モデルの実効再生産数を示すものであり、日本における感染拡大開始期のデータから「実効再生産数=1.4」とした。感染者数のピークアウトには、2つのパターンが考えられる。1つは「パラメータbが1を下回る」というパターンであり、接触制限が29%を超えると感染者数が減り始める。もう一つは「感染者数増加にあわせて未感染者数が減る」ことによるものである。

日本政府が採る対策は、医療対応の限界以下に感染者のピークを抑えつつ、集団免疫を作るというものである。感染者数は抑えられる一方、集団免疫を獲得し収束するまでに時間を要するという長期化モデルである。

推計結果は下記の通りである。例えば東京では、29%以上の人同士の接触制限が達成された場合、感染者数のピークは4月18日の3,313人と推計される。一方、接触制限の強さによってトータルの感染者数は異なり、50%減の場合で20,228人、80%減の場合で13,809人と推計される。他方、接触制限を行わなかった場合、感染者数のピークは5月8日の910,213人、トータル人数は8,576,177人と推計される。

なお、東京では4月18日時点での報告感染者数は181名であるのに対して、推計では3,313人となっている。この差異は、サイレントキャリア(検査を実施していない人)によるものと理解される。

検査体制の見直し、治療薬の治験、ウイルスの特性の研究等は現在進行系で行われており、日々状況が変化する。それらの動向によっては、早期収束を期待できるものもあれば、長期化に向かう可能性もある。後者の例では抗体が弱く、再感染が起こるようであれば、今回の試算も有効でない。本調査では、継続的に各不確定因子が発生した場合のモデルの変化を継続的に推計していく。


基本再生産数1.4、人同士の接触機会±0%

東京:ピーク時人数910,213(5/8)、トータル人数8,576,177 大阪:ピーク時人数576,218(5/8)、トータル人数5,428,633 全国:ピーク時人数8,235,850(5/12)、トータル人数78,000,578


基本再生産数1.4、人同士の接触機会50%減

東京:ピーク時人数3,313(4/18)、トータル人数20,228 大阪:ピーク時人数2,142(4/18)、トータル人数12,782 全国:ピーク時人数9,827(4/19)、トータル人数60,694


基本再生産数1.4、人同士の接触機会80%減

東京:ピーク時人数3,313(4/18)、トータル人数13,809 大阪:ピーク時人数2,142(4/18)、トータル人数8,632 全国:ピーク時人数9,827(4/19)、トータル人数41,609


基本再生産数2.0、人同士の接触機会±0%

東京:ピーク時人数4,784,668(4/24)、トータル人数13,942,856 大阪:ピーク時人数3,037,817(4/24)、トータル人数8,825,075 全国:ピーク時人数42,768,476(4/27)、トータル人数126,800,000


基本再生産数2.0、人同士の接触機会50%減

東京:ピーク時人数165,790(4/18)、トータル人数2,209,171 大阪:ピーク時人数107,167(4/18)、トータル人数1,413,486 全国:ピーク時人数347,100(4/19)、トータル人数9,501,066


基本再生産数2.0、人同士の接触機会80%減

東京:ピーク時人数165,790(4/18)、トータル人数441,307 大阪:ピーク時人数107,167(4/18)、トータル人数284,938 全国:ピーク時人数347,100(4/19)、トータル人数928,584


基本再生産数2.5、人同士の接触機会±0%

東京:ピーク時人数6,662,889(4/20)、トータル人数13,942,856 大阪:ピーク時人数4,129,620(4/20)、トータル人数8,825,075 全国:ピーク時人数52,486,091(4/23)、トータル人数126,800,000


基本再生産数2.5、人同士の接触機会50%減

東京:ピーク時人数2,082,495(4/19)、トータル人数10,446,045 大阪:ピーク時人数1,341,835(4/19)、トータル人数6,656,491 全国:ピーク時人数6,423,282(4/24)、トータル人数63,922,960


基本再生産数2.5、人同士の接触機会80%減

東京:ピーク時人数1,834,473(4/18)、トータル人数4,448,472 大阪:ピーク時人数1,184,506(4/18)、トータル人数2,867,724 全国:ピーク時人数3,204,792(4/19)、トータル人数8,363,400



(サンタフェ総合研究所)

実業之日本フォーラム編集部

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