新型コロナウイルスによる日本人の致死率、感染率が低い要因として、BCGワクチンの有効性が注目されている。BCGワクチン接種の有無は国ごとに判断が異なる。日本では1949年からBCGワクチンの接種が義務化されている一方、スペイン、イタリア、アメリカなどでは義務化されていない。スペインの隣国であるポルトガルではBCGが推奨されているが、死亡者数が295人とスペインの1/40程度にとどまっている。
4月6日にMedRxivに投稿された「Association of BCG vaccination policy with prevalence and mortality of COVID-19」(プレプリント)では、136ヵ国を対象として、BCGワクチン接種とCOVID-19の関係が検証されている。現在ワクチンを定期接種している国、かつて定期接種していがた現在はしていない国、ずっと定期接種していない国に分けて解析した結果、BCG ワクチン接種と COVID-19 による発症率および死亡率とは有意な関係があること、そしてその関係は2020年2~3月の平均気温と平均寿命をコントロールした後も成立していることを示した。ワクチンの防御効果があるとすれば、死亡率の低下というよりは、ウイルスの伝播の大幅な減少に起因している可能性を指摘している。気温は発症率、死亡率と有意な相関はなかった一方、平均余命は両者と有意な相関が見られた。
当レポートは、上記以外の混交要因が残っている可能性を指摘しており、具体例として、その国の全体的な衛生状態、人口当たりPCR検査の回数、民族的な遺伝的背景、SARS-CoV-2の発症率、緩和・抑制政策の強さ、政策に対する国民の遵法意識、文化・生活様式(握手やハグ、マスク着用、手洗いなど)などを挙げている。その点は更なる検証が必要としながらも、現在BCGワクチンの接種が義務化されていない国では、その安全性を慎重に評価した上で、今回のCOVID-19発生時にBCGワクチンの接種を増加/実施することを、少なくとも他国で現在接種を受けている人々については(定期接種としての乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受けないという前提のもとで)検討してもよいのではないかと結論づけている。
(株式会社フィスコ 中村孝也)