「BISは「Search for yield」を警戒」では12月7日に発表されたBIS(国際決済銀行)の四半期報告書を紹介したが、その中では新興国の二極化についても言及されている。
年初からの新興国通貨の値動きは、各国経済の業種構成を一定程度反映している。具体的には、台湾や韓国などのテクノロジー企業の比重が高い国の通貨は、パンデミック前の水準を上回った。また、世界の製造業が勢いを取り戻したことで、グローバルなバリューチェーンに組み込まれた新興国通貨も3月の下落を取り戻した。一方、ロシアや一部の中南米諸国など商品輸出依存度が高い国の通貨は、3月の下落からの回復が限定的である。パンデミック以降、株式市場ではテクノロジー株が高バリュエーションを牽引してきたが、それと似通った傾向が新興国通貨にも見られるとの指摘である。
多くの新興国が、これまで先進国への輸出を梃子にして経済発展を遂げてきた。しかし、情報革命により、グローバリゼーションの連鎖的進展に大きくブレーキがかかった。その利益を享受できていない国家は、十分な外貨準備の蓄積や技術移転が行われていない。弱い国力では、第四次産業革命をリードすることも、魅力的な市場となることもできず、世界経済から取り残される危険性がある。また、コロナによる二極化もこの傾向に拍車をかけるだろう。「先進国行き」のバスの数はもう残り少ないのかもしれない。
(株式会社フィスコ 中村孝也)