「デジタル産業」の定義は各国によって異なる。そのため、2018年11月にOECDは、各産業におけるデジタル関連の財・サービスの供給・使用構造を明らかにし、デジタル化に関して国際比較可能なデータを集めるための枠組みを提案した。内閣府の「デジタルエコノミーに係るサテライト勘定の枠組みに関する調査研究」報告書では、このOECDの枠組みに基づき、わが国の経済を「デジタル産業・非デジタル産業」、「デジタル生産物・非デジタル生産物」に分類して、デジタルSUTの全体像を試算している。具体的には2015年の「経済センサス-活動調査」(2018年公表)を用いて、同年のデータが作成された。
当報告書によると、2015年のデジタル産業の産出額は71.4兆円(全体の7%)、デジタル産業の粗付加価値額は37.4兆円(全体の7%)であった。粗付加価値額が大きいのはデジタル基盤産業(30.5兆円)で、プラットフォーム及び自社サイトに依存する企業(4.3兆円)、デジタル仲介プラットフォーム(1.7兆円)、E-テイラー(0.5兆円)、デジタル専業金融・保険業(0.3兆円)が続く。国内家計現実最終消費のうち、デジタル注文による支出額は約32.7兆円(全体の8.9%)。デジタル注文による輸出額は約25.6兆円(全体の約27.8%)。デジタル注文による輸入額は17.4兆円(全体の18.2%)となっている。
デジタルSUTは、OECDが共通の定義を定め国際比較可能な形でデジタルエコノミーの全貌を明らかにしようとする試みであるが、この枠組みを踏襲した他国の推計の例はまだ存在せず、より簡略化した(カバレッジの小さい)デジタルエコノミーの規模等の推計は、アメリカ・カナダ・オーストラリアなどで行われているとされている。
(株式会社フィスコ 中村孝也)