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2020.12.15 外交・安全保障

中国依存度の高いレアアース

中村 孝也

レアメタルとは「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要(経済産業省)」で、産業に利用されるケースが多い希少な非鉄金属を指し、具体的にはタングステン、コバルト、ニッケルやレアアース(1鉱種としてカウント)等の31鉱種がレアメタルと定義されている。レアアースはレアメタルの一種で、「希土類」といわれる17元素の総称である。

レアアース生産の2009~11年における中国のシェアは95%以上で、2018年時点でも71%を占める。「米国はレアアースの8割を中国に頼っている」、「EUはハイテク製品に使われるレアアースの98%を中国に依存している」などと報じられているが、日本では、調達リスク回避努力の結果、輸入全体に占める中国の割合は2009年の85%から2018年の58%に低下した。中国、ベトナム、マレーシアの3ヵ国で総輸入の85%を占める。

日本におけるレアメタルの備蓄目標は「国内基準消費量の60日分」である。1986年に設定された目標だが、「重要性が高い種類は半年以上、低いものは60日以下と弾力的に運用する方針」とも報じられている。鉱物資源自給率は2011年度の44.0%から2015年度は45.0%に上昇した。更なる課題として、「鉱物資源自給率目標(2030年ベースメタル80%、レアメタル50%)の達成」が掲げられている。

鉱種別の国内需要は、セリウムが34.2%、ジジム+ネオジム(ジジム+ネオジムはジジミウムとも呼ばれる、ネオジムとプラセオジムの混合物)が26.4%、ミッシュメタル(ランタンとセリウム等で構成される合金)が19.9%で全体の80.5%を占める。レアアース全需要量の2割程度を占める磁石向けレアアースがレアアース市場価値の約8割を占めると言われることから、磁石向けレアアースであるネオジムやプラセオジムの需要が増加する一方で、ランタンやセリウムの余剰が拡大している。セリウムの主要用途はガラス研磨剤、自動車排出ガス助触媒、FCC触媒であるが、2010年以降の中国の輸出制限に対応して、主として研磨業界のリサイクル推進、ジルコニア研磨剤への代替が進んだことから、需要が減少した。

なお、レアアースのリサイクルについては、ニッケル水素電池に使用されているミッシュメタルは近年回収技術が確立され、2012年からHEV車用の使用済み電池からの回収を開始している。しかし、リサイクルに関する十分な統計は無いようだ。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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