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2020.12.01 外交・安全保障

経済シナリオと金価格

中村 孝也

QaurumのGold Valuation Frameworkでは、経済シナリオに対応した金価格のイメージが示されている。以下ではデフォルトで設定されている4種類のシナリオを紹介するが、今後の経済の推移によって、金価格にも相応の差が生じる可能性が示唆されている。

今後5年間で年率22.4%の金価格上昇を見込むのが「Deep Recessionシナリオ」である。デフォルトで設定されているシナリオの中では、もっとも金価格にとって好ましいシナリオである。「感染症による経済への影響が深刻で長期化する」という想定の下、(1)2023年まで世界経済の水準が感染症前の水準に回復しない、(2)先進国の経済が2019年水準に回復するのは2026年まで後ずれする、(3)低金利政策は長期化する、(4)クレジットスプレッドは2024年まで高止まりする、といったシナリオである。

また、「EM Downturnシナリオ」も年率19.2%上昇と、こちらも金価格にとっては好ましい環境を提供するようだ。こちらは「感染症による経済への影響はベースケースよりも悪化する」という想定の下、(1)中国経済はマイナス成長、(2)商品価格の下落も新興国経済に悪影響を与える、(3)ただし政府は金融政策で早期に対応するため、2021年には経済は回復に転じる、といったシナリオである。

一方、「Swift Recoveryシナリオ」では年率8.6%の上昇が見込まれている。「世界のGDPは2020年に4%減少する」という想定の下、(1)2020年前半の景気は極端に弱いが、2020年後半には急回復を遂げる、(2)金利水準は2024年までゼロ近辺で据え置かれる、といったシナリオである。

そして、「US Corporate Crisisシナリオ」では年率2.2%の上昇にとどまる見通しである。設定されているシナリオの中では、もっとも金価格にとって好ましくないシナリオである。「米国企業がダメージを受ける」という想定の下、(1)2020年の株価が45%下落する、(2)ドル安で輸入価格が上昇し、企業のマージンが悪化する、(3)企業、投資家の信頼感が悪化する、(4)FRBの金融政策は政府債が中心となるため、社債スプレッドは拡大する、(5)ただし、支援的な財政政策が景気を支援し、2021年の株価は19%上昇、クレジットスプレッドも縮小に向かう、といったシナリオである。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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