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2020.11.16 外交・安全保障

日本から失われていく暗号資産

中村 孝也

Crystal Blockchainによると、2020年1~9月の日本からのビットコイン流出額は23.0億ドルであったのに対して流入額は14.4億ドルであり、トータルでは8.6億ドルの純流出となった。1~6月は3.3億ドルの純流出であったことから、7~9月には流出ペースがやや加速したと見られる。2019年の純流出は11.5億ドルであったが、このペースが続けば、2020年通年も2019年とほぼ同程度の純流出が生じることになりそうだ。

日本から暗号資産が継続的に失われている状況には、警戒感が必要だ。2013年以降の日本からのビットコイン純流出は累計で41.8億ドルに上っており、2017年以降は継続的な純流出が生じている。累計の純流出額が大きいのは、セーシェル、リヒテンシュタイン、日本などであり、純流入額が大きいのは、米国、イギリス、EUなどである。

日本から10兆円弱の暗号資産が流出?」では、インターネット、スマートフォン、携帯電話の普及率を参照して、日本からの暗号資産の純流出は2030年時点で84~86億ドル、2020~30年の累計では690~850億ドルという規模感である可能性を示した。「今後の暗号資産の普及率がS字カーブを描いて上昇する」という想定に立ち、暗号資産の純流出額を再度推計しても、2030年時点では96億ドル、2020~30年の累計では757億ドルと、結果は大きく変わらない。

さらに大きな規模で、日本からは暗号資産が失われていくことが見込まれる。こういったデジタル資本の流出を止めるために、今の日本に必要なものは、規制強化ではなく、流入を促進することで一方的な流出に歯止めをかけるという「デジタル資本吸収戦略」であろう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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