「日銀金融システムレポート」(2020年10月号)では、感染症の影響が続くもとで、金融市場およびわが国の金融機関の金融仲介活動について状況を整理し、わが国の金融安定面への影響やリスクに関する分析・評価を行っている。今回は「感染症の拡が融機関の国内の信リスクに及ぼす影響」、特に「感染症の拡による企業財務への影響」に焦点が当てられているのが特徴である。
感染症が拡するまで、企業は潤沢な流動性や自己資本を確保していたが、中小企業は相対的に劣位にあった。特に中企業の中でも感染症の影響を強く受けている飲食・宿泊・対個人サービスは、元資が3ヵ月分の販管費を下回る企業が全体の8割程度と、他の業種と比べて、その割合がいことに特徴がある。
企業の売上と費が一定程度減少し、各種企業融支援策が一切実施されなかった場合、2020年度の経常利益が赤字の企業の割合は、企業では前年度比5%ポイント程度の上昇にとどまる一方、中企業では 40%ポイント以上上昇し、中企業全体の約4分の3が赤字に陥ると試算されている。また、2020年度中に営業キャッシュフローのマイナスを元資でカバーできなくなる「短期資金不足先」の割合は、大企業ではほぼ変わらない一方で、中小企業では20%程度まで上昇することが見込まれている。「各種企業融支援策によって悪影響は一定程度相殺される」と結論づけられているが、中小企業におけるコロナ禍の影響の深刻さを再認識させる内容である。
(株式会社フィスコ 中村孝也)