9月11日に発表された日銀レビュー「BIS国際銀行統計からみえる本年1-3月期の米ドル資金取引の動き」では、邦銀による1~3月の米ドル資金取引の動きを紹介している。BIS国際銀行統計のデータによると、邦銀は日本銀行から米ドル資金供給オペを通じて米ドル資金を調達し、本支店勘定経由で米国支店に回金する姿や、米国において、米国連邦準備制度(FRB)の準備預金が含まれる公的機関向け債権や事業法人等に対する貸出が増加した姿が見受けられた。FRBが日本に供給したドルは、結果的にそのまま米国に戻ったようだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、国際金融市場が大きく不安定化した時期を含む 2019年12月末から2020年3月末にかけて、特に本邦拠点における本邦居住者に対する米ドル建て債務残高が増加した。増加の背景には、米ドル資金市場の円滑な機能を支援するために日本銀行が実施した米ドル資金供給オペの利用の拡大もあるとみられる。こうした急激な増加は、グローバル金融危機の影響が深刻化した2008年9月末から12月末にかけても同様に観察された。そして、グローバル金融危機時と同様、邦銀は、米ドル資金供給オペ等を通じて調達した米ドル資金の多くを本支店勘定経由で海外支店へ回金した。こうした海外支店への米ドル回金の主な向け先は、米国である。
米国では、(FRBの準備預金が含まれる)公的機関向け債権や事業法人等に対する貸出(コミットメントラインからの資金引出し)が増加している。2019年12月末から2020年3月末にかけて、米国支店向け米ドル回金増加額は約+770億ドルであった一方、邦銀の米国拠点の現地通貨建て現地向け債権残高は約+880 億ドルであった。一般政府や中央銀行等からなる「公的機関向け」の増加寄与が約+480 億ドル、次いで民間事業法人等からなる「非金融法人向け」の増加寄与が約+350億ドルで、両部門で増加額の大半が説明される。
(株式会社フィスコ 中村孝也)