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2020.08.11 外交・安全保障

「GAFA+M」と経済大国との比較

中村 孝也

コロナショックにもかかわらず、デジタル企業の成長が加速している。コロナショック後にGAFA+M(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の時価総額は東証一部のそれを上回った。過去10年の平均で見たGAFA+Mの売上高は3,479億ドル、営業利益は1,188億ドルである。売上高は2016年頃から加速している一方、営業利益はやや凸凹がありながらも、中期的には増加傾向にある。今回は驚異的な成長力を見せるGAFA+Mを経済大国と比較してみよう。

上記で見たGAFA+Mの売上高、営業利益は、米国、中国、日本の名目GDPには遥かに及ばない。2018年のGAFA+Mの合計売上高は、日本のGDPの約1割の水準にとどまる。もっともGAFA+Mの成長力は著しい。2000年以降で見ると、GAFA+Mの売上高は年率16.6%、営業利益は年率16.1%の成長を遂げた。同期間では米国のGDPが年率3.3%増、日本のGDPが0.1%増であったので、成長ペースの格差は圧倒的である。同期間に年率14.4%の成長を遂げた中国と同程度の勢いで成長してきたと見ることもできる。

次に、GAFA+Mの営業キャッシュフロー(10年平均)は1,476億ドルである。2019年の海外売上高構成比を用いて簡易的に「海外から稼いだ営業キャッシュフロー」を試算すると、2019年のGAFA+Mが海外から稼いだ営業キャッシュフローが1,249億ドルであった。これに対して、日本の経常黒字は1,721億ドル、中国の経常黒字は1,477億ドルである。中国の経常黒字とほぼ同程度の金額を、僅か5社の企業が海外から稼いだということになる。また日本や中国の経常黒字が横ばい、ないしは縮小方向であるのに対して、GAFA+Mによる海外からの稼ぎは右肩上がりで推移しており、近い将来、両国を上回る可能性も高そうだ。

2019年末のGAFA+Mの純資産は5,574億ドルであり、その水準は、日本や中国の対外純資産(それぞれ3.3兆ドル、2.1兆ドル)を大きく下回る。もっとも10年前からの増加分は4,449億ドルであり、同期間の日本の対外純資産の増加分(4,228億ドル)にほぼ匹敵する(中国は8,361億ドルの増加)。

GAFA+Mは、規模的には経済大国には遥かに及ばないものの、成長力は著しく、経済大国に見劣りしない稼ぎを得るまでに成長したと評価することも可能だろう。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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