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2020.07.07 外交・安全保障

各国が前向きになってきた中央銀行デジタル通貨

中村 孝也

「国際金融都市TOKYO」は再始動するか?」で取り上げた自民党政務調査会の「ポストコロナの経済社会に向けた成長戦略」では、短いながらも、CBDC(中央銀行デジタル通貨)について、「リブラ構想や、デジタル人民元の発行が近いことを踏まえ、米国と連携しつつ、CBDCについて、技術的な検証を狙いとした実証実験などを行うべきである」と言及している。

少し前に公表された「自民党金融調査会提言」でも、デジタルマネーPT推進提言として、「CBDCの技術標準を中国に先に握られることは安全保障上の脅威になりえる」とした上で、(1)わが国が主導する形で、国際的な協調の中でCBDCの技術標準を構築していくことが重要、(2)米国も巻き込んだ合意形成を目指すべき、(3)CBDCについて、より具体的な検討を直ちに開始すべき、(4)実証実験についてもスピード感をもって取り組むべき、という提言が盛り込まれた。「デジタル円」という直接的な表現は避けられたが、政府の骨太の方針や成長戦略にどのような表現で盛り込まれていくのかが注目されるところである。

なお、BIS(国際決済銀行)の年次報告書では、CBDCに関する中央銀行の発言動向が紹介されている。2016年以降、発言件数は継続的に増加しており、特に2018年前半に大きく増加した。ただ、当時はネガティブな発言が優勢であった。一方、2018年後半から少しずつポジティブな発言が増え始め、その傾向は2019年後半に加速した。そして、2020年に入ると、ポジティブなコメントがネガティブなコメントを上回るようになってきた。日本では必ずしもそういった印象を受けないが、海外での捉え方は異なるようだ。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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