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2020.06.15 外交・安全保障

「サプライチェーン対策補助金」はどの程度有効か?

中村 孝也

第1次補正予算では「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」として2,200億円が計上されている。コロナショックをきっかけにサプライチェーンの再構築が喫緊の課題となったことを受けて、措置されたものである。この「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」は、一般社団法人環境パートナーシップ会議を基金設置法人、みずほ情報総研株式会社を事務局として、公募が始まっている。期間は2020年5月22日~7月22日であるが、既に先行審査も行われているようだ。1社当たりの補助金上限額は150億円である。

対象事業は、
A事業:生産拠点の集中度が高い製品・部素材の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備事業であり、
(1)生産拠点の集中度が高い製品・部素材の国内での生産拠点整備事業か、(2)生産拠点の集中度が高い製品・部素材を極力使用しない技術を活用した生産を行う生産拠点整備事業、のいずれかに該当する事業、
B事業:一時的な需要増によって需給がひっ迫するおそれのある製品・部素材のうち、国民が健康な生活を営む上で重要なものの生産拠点等の整備事業、
C事業:(1)複数の中小企業等のグループによる共同事業、(2)事業Aに該当する事業、(3)グループ化メリットを有する事業、の全てを満たす事業、の3種類である。

A事業については、生産拠点の集中度と設備機械措置の先端性を、B事業については需給ひっ迫性と国民が健康な生活を営む上で重要なものであることを、企業側が示す必要がある。補助金であるから当然でもあるが、申請のハードルは必ずしも低くない印象を受ける。

補助金の認可状況が公表されれば、政策の有効性も評価できるだろうし、先行して国内回帰を促進している台湾の状況とも比較ができるだろう。一見したところ、国内での新規設備投資を促進する効果はありそうだが、海外での設備投資計画を変更させたり、既存の海外設備投資を国内に移管させたりするほどの効果は期待しづらそうだ。実際、公募要領でも「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金は7年ぶりの全国どこでも事業が可能な立地補助金」と説明されており、「国内設備投資促進の一環」という位置付けである。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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