イスラエルとハマス停戦合意成立(2)

2021.05.24

A demonstrator holds a Palestinian flag during a protest in support of Palestinians following a flare-up of Israeli-Palestinian violence, on Republique square in Paris, France, May 22, 2021. REUTERS/Benoit Tessier

本稿は、イスラエルとハマス停戦合意成立(1)の続編となる。

イスラエルが停戦に応じたのは、イスラエル主要紙ハアレツが報じたように、「イスラエル当局者の話として、ハマスの地下トンネル爆破やハマスの幹部殺害など作戦の主要目的がほぼ達成されたとの論調がでている」ためであろう。さらに、各種報道でガザ地区における被害が大きく報じられたことから、これ以上戦闘を継続すると国際的批判がさらに高まりかねないことを危惧したことも否定できない。

イスラエルは、アメリカの中東政策やイスラエル対応に疑問を感じていたようだ。「イラン核合意」を、一時的なイランの時間稼ぎと見なしており、合意に対し反対を表明している。バイデン政権はオバマ政権が締結した「イラン核合意」への復帰を選挙公約として掲げ、水面下で交渉を継続していると言われている。また、バイデン大統領就任1カ月後のイスラエルとの首脳会談開催などイスラエル軽視の政策を取っているように思え、ネタニヤフ首相は、米国の中東政策に懐疑心を持っていたことが、当初バイデン大統領からの停戦合意を拒否した背景にあるのではないだろうか。

中東における勢力分布は、オバマ政権時代と比べ大きく異なっている。トランプ大統領の強引ともいえる外交の結果、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、モロッコ、スーダンなどの国々がイスラエルとの国交正常化を果たし、中東の盟主サウジアラビアとの関係も改善しつつある。一方、イランは、2021年6月にロウハニ大統領の任期満了に伴う大統領選挙が予定され、反米保守強硬派からの有力候補の選出が濃厚な情勢となっている。さらに、イランには中露が急速に接近し、大規模な経済支援や軍事協力が行われようとしている。中東問題は、従来の「イスラエル対アラブ諸国の対立」という単純な構図ではなくなっている。今回のイスラエルとハマスの武力衝突は、2国間だけの問題ではなく、中東情勢の地殻変動の兆候である可能性がある。

わが国は、85%以上の石油の輸入を中東地域に依存している。米国、英国、EU各国はこのダイナミズムの変化を見極めながら、自らの立ち位置を定めようとしている。武力紛争発生直後の日本政府の公式見解は、5月11日の外務報道官談話として「(1)東エルサレムでの衝突とガザ地区でのロケット弾発射に深刻な憂慮を表明。(2)イスラエルとパレスチナの双方に暴力を非難し、両国が平和かつ安全に共存する『2国家解決』を支持する。(3)両国が可能な限り早期に信頼関係の構築に努め、交渉再開に資さない一方的行為を最大限自制し、直接交渉の前進を図るべく一層努力するよう呼びかける 」と双方の暴力を非難し、どちらの側にも偏らない公平な立場を表明している。今回のイスラエル、ハマスの対立に関して、表面的な平和主義にとらわれることなく、戦略的展望に立った、慎重な対応が求められることを認識すべきであろう。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚 防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。


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