台湾を巡る米中対立(その2)

本稿は「台湾を巡る米中対立(その1)」の続編となる。

朝鮮戦争70周年にあたる昨年、朝鮮戦争における中国義勇軍の働きが、メディアを通じていつになく広く伝えられた。そのロジックは「米国の朝鮮半島における侵略行為を阻止した」というものである。米国からの圧力が強まっている環境下で、過去の「抗美」に国内の目を向けさせ、「米国に対し弱腰」との政権批判を封じ込めようとしているのであろう。

現時点で台湾情勢を巡る米中対立が緩和される可能性は低い。しかしながら、事態がこれ以上エスカレートすることも想像しづらい。中国解放軍報には、米国の台湾への関与を批判する記事に加え、国際情勢安定化のためには中米協力が不可避との論調が目に付く。従って、台湾周辺における中国の軍事活動の活発化が、米国政権移行のごたごたを利用した中国の台湾進攻準備である可能性は低い。中国は、国際的な協調を重視するバイデン次期大統領が、対中強硬姿勢を転換することを期待しているであろう。

ここで注目されるのが北朝鮮ファクターである。経済制裁、自然災害及び新型コロナ感染対策という三重苦を抱える北朝鮮が、バイデン次期大統領就任後に、再度瀬戸際戦術をとり、長距離弾道ミサイルの発射等の軍事的強硬路線に復帰し、朝鮮半島情勢が緊張する可能性は低くない。その場合、バイデン次期大統領がオバマ前大統領同様に、中国の影響力に期待を持つ可能性がある。

今年1月の朝鮮労働党第8回党大会に中国共産党から朝鮮労働党に送られた祝辞には、「中国と北朝鮮は山と水で結ばれた友好な隣人」とあり、地域の平和と安定並びに発展と繁栄の実現に協力する用意があると述べている。かつて中朝関係は「唇歯の関係」、「血盟関係」とされてきた。「山と水の関係」が、緊密度の程度を表しているのかどうか不明であるが、一定程度の影響力を持っていることは明らかである。バイデン次期大統領が、北朝鮮に対する中国の協力を得るために、台湾との関係を見直す可能性は否定できない。

米中対立の中、どちらを選択するかという判断を迫られるのは日本にとって好ましい状況ではない。一方で、米中が協調し、台湾を見捨てるような情勢になれば、最悪とも言われる日韓関係も含め、日本が中国の圧力を一身に受けるような情勢にまで発展しかねない。北朝鮮情勢への対応に関し、米国が単独行動をとらないようにバイデン新政権への十分な根回しが求められる。

サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。

写真:ロイター/アフロ


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