台湾を巡る米中対立(その1)

台湾を巡り米中の対立が激化している。米国は、台湾への武器売却に加え、台湾海峡で軍用艦艇を通過させるなど攻勢を見せている。一方、中国は、台湾周辺における軍事活動を強化させることでこれに対応している。昨年10月31日に開かれた台湾の国家安全会議において、蔡総統は中国軍が活動を活発化させ、地域の安全保障に重大な影響を与えていると指摘し、万全の準備態勢をとるように指示したと伝えられている。

そのような中、昨年11月に、台湾南西部の高雄市の海軍基地において、米台の海兵隊が共同訓練を行っていることが明らかにされた。更には、複数の台湾メディアが、米太平洋軍情報幕僚マイケル・スチュードマン海軍少将が台湾を訪問したことを伝えた。11月23日付USNIニュースは、中国報道官が海軍高官の台湾訪問を強く批判し、対応措置をとることを明言したと伝えている。

対応措置がどの様なものになるか不明であるが、台湾周辺における中国の軍事活動の活発化が予想される。10月末及び11月中旬に、台湾空軍のF-5E及びF-16それぞれ1機が墜落した。両機ともに訓練中の事故であり、中国空軍への対応中の事故ではなかった。しかしながら緊張状態の中で、判断ミスや誤解から事故が生起し、これがエスカレーションする可能性は否定できない。

米国は国家安全保障戦略及び国防戦略において台湾との関係強化の方針を示しており、2018年3月には「台湾旅行法」を、2020年3月には「台北法」を制定した。高官訪問や武器の売却はトランプ政権の既定方針である。ただ、注目されるのは、共同訓練や制服高官の訪問が明らかにされたのが大統領選挙後であることである。バイデン新政権が成立し、台湾への関与政策が大きく変化した場合、「やはりバイデンは親中派だと」批判できるように、トランプ大統領は既成事実を積み上げているのではないかと考える。

共同訓練や制服高官の訪問は、ローキーで扱えば扱えないことはない。事実、過去の米海軍の特殊部隊(Navy Seals)と台湾特殊部隊による共同訓練や、少将レベルの高官による台湾訪問は、それほど注目されなかった。台湾としても、中国の圧力に対抗するためには米国の関与が不可欠であることから、米台両政府の思惑が一致し、それぞれをマスコミ等に公表したと考える方が自然である。米国務省は1月、台湾高官と地域情勢、米台軍事協力及び武器移転に関するテレビ会議を行うことを明らかにした。米国が、中国への圧力強化の一環として台湾を利用する姿勢に変化は見られない。

中国は米国の反中攻勢に対し、国内的に弱腰であると見られることを一番恐れている。台湾統一は中国共産党の公約であり、米国による台湾への関与は看過できない。かといって米国に対し直接的行動に出ることは困難である。米国に対しては外交的な反発や不快感の表明にとどめ、台湾周辺の軍事活動を活発化することにより、台湾独立派を圧迫するとともに国内の不満を解消する政策をとっているのであろう。

サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。

写真:ロイター/アフロ


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