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2021.01.07 安全保障

米国、資金調達総額は過去最高

中村 孝也

米連邦準備理事会(FRB)が12月10日に発表した資金循環統計によると、9月末の家計純資産は2019年末比4.4%増の123.52兆ドルであった。3月末に一時的に落ち込んだが、その後は順調に回復している。家計純資産の増加は第2四半期が8.29兆ドル、第3四半期が3.82兆ドルであったが、株式による純資産の増加は第2四半期が6.19兆ドル、第3四半期が2.76兆ドルであり、株価上昇の影響が大きかったことが読み取れる。

また、9月末時点での非金融部門の債務残高は60.11兆ドルで、年率換算4.98%の増加となった。他方、対GDPでは284.1%と、6月末時点での304.2%からは低下した。非金融企業の債務残高は前四半期比380億ドル減の17.5兆ドルと、2010年末以来初の減少となった。

第3四半期に、海外部門は株式を年率換算8,114億ドル買い越した。第2四半期の4,125億ドルからは買い越し幅が拡大した。2019年は売り越しであったが、2020年は通年でも買い越しになる可能性が高そうである。2019年4月までの12ヵ月間で米国株を2,146億ドル売り越していた海外勢は、直近12ヵ月間で2,628億ドル買い越している。一方、債券については、第3四半期に年率換算847億ドルの売り越しとなった。第1四半期は売り越し、第2四半期は買い越しの後、再び売り越しに転じた。依然として中国による米国債保有は減少が続いている。

コロナショックにより世界各国の金融市場が一変した2020年、米国企業とその大株主は過去最高の4,350億ドルを調達した。ブルームバーグの集計データによると、2014年に記録した従来の最高額2,790億ドルを大幅に超過したという。調達額の約4分の1は従来型のIPOで計1,000億ドルに上った。アリババ・グループ・ホールディングの巨大IPOがあった14年を除くと、これまでで最大規模である。バイオセクターのIPOが計230億ドル、テクノロジー企業は計190億ドルであった。

また、70社余りの外国企業が米国に上場し、計210億ドル以上を調達し、これも2014年以来最大であった。米議会が規制強化に動く中で、中国企業の株式公開が大部分を占めた。また、240余りのSPACが株式公開し、企業買収に向けて計810億ドルを調達している。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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