長時間滞空型無人機の導入について

2020.12.01

我が国を取り巻く厳しい安全保障環境、人口減少・少子高齢化が進む中、限られた人材を有効に活用するための施策として、無人航空機が導入されようとしている。特に周辺国の軍事活動や違法行為などの活発化に伴い、常続的な海洋監視能力を強化するため、長時間滞空型無人機の配備に向けた準備が進められている。

防衛省は、31中期防衛力整備計画において「空中での常時継続的な監視を実施し得るよう無人機部隊1個飛行隊の新編」を掲げている。日本政府はすでに、武器輸出を管理するFMS(Foreign Military Sale)システムを通じて、米国政府に3機のRQ-4グローバルホーク無人機を含む関連設備や部品などの調達を申し入れている。2015~2016年度予算で3機分の機体構成品と地上装置等の取得予算を計上し、2017年度の防衛予算概算要求では、1機の購入費173億円と関連経費22億円が計上された。2020年度末に航空自衛隊三沢基地に人員約70名の部隊を新編する予定である。

グローバルホークとは、米国ノースロップ・グラマン社製の無人偵察機である。機体の全長は約13.5メートル、全幅は35.5メートル、巡航速度は時速約635キロメートル,実用上昇限度は約19,800メートル、連続飛行時間は約35時間である。グローバルホークは攻撃力を持たないが、合成開口レーダー、電子光学カメラ、赤外線センサーなどを搭載している。映像情報収集機能および信号情報収集機能を有しており、移動目標追跡情報をほぼ同時に友軍に提供することが可能である。米空軍は、2004年11月に運用を開始した。イラクやアフガニスタンで実戦に投入するとともに、北朝鮮を対象とした核実験監視や弾道ミサイル防衛に活用している。

また、海上保安庁は、2020年10月15日から11月10日の間、海上自衛隊八戸基地において、遠隔操縦無人機MQ-9Bシーガーディアンの実証実験を行った。防衛省では、航空自衛隊F-2戦闘機の後継となる次期戦闘機の候補の一つとして、このMQ-9の派生機である米空軍のMQ-9リーパーの導入を一時検討していたことが明らかになった。防衛省は、過去10数年に渡るMQ-9リーパーの運用実績や、多用途機としての充実した機能の利点に注目し、導入の候補として考えたのかもしれない。

MQ-9リーパーは、長い航続距離と高い監視能力および攻撃能力を有した長時間滞空型の多用途機である。米空軍は、2007年からイラクとアフガニスタンに実戦配備し、2009年にはタリバンの指導者バイトゥッラー・マフスード司令官の殺害に成功した。米空軍は2011年から2018年の間に372機を調達し、体制の充実を図っている。2020年1月には、バクダッド国際空港でイランの英雄とも言われた革命防衛隊のガーセム・ソレイマニ司令官を殺害することに成功している。この無人機はカタールのアル・ウデイド空軍基地から離陸し、米国ネバダ州クリーチ空軍基地から遠隔操縦され、ベルファイヤー対戦車ミサイルによりソレイマニ司令官を乗せた車両に命中させた。

科学技術の進歩とともに、AIや5Gあるいは衛星通信機能、衛星情報収集機能との機能の融合など、無人機システムの自動化や自律化がさらに進展することが予想される。米国との連携も含め、我が国の安全保障にとって長時間滞空型無人機が有効かつ機能的に活用されることを期待したい。

サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。


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