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2020.11.27 安全保障

サプライチェーン対策補助金アップデート

中村 孝也

11月20日、経済産業省は、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金に関して、146件、2,478億円を採択したことを公表した。コロナショックでサプライチェーンの脆弱性が顕在化したとの認識から、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、または国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、国内の生産拠点等の整備を進めることにより、製品・部素材の円滑な供給を確保するなど、サプライチェーンの強靱化を図ることを目的とし、工場の新設や設備の導入を支援するものである。

具体的には、「生産拠点の集中度が高い製品・部素材」として半導体関連、航空機関連、車載用電池関連、レアメタル関連、ディスプレイなどの56件、「国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材」として消毒用アルコール、マスク(サージカルマスク)関連(部材含む)、医療用ガウン関連、手袋(医療従事者用)などの90件が採択された。

台湾の「歓迎台商回台投資行動法案」による回帰投資との比較感からは、1社当たりの投資金額はかなり小粒なようにも見受けられる。先行審査受付分を除くと応募は1,670件、1兆7,640億円あったことから、潜在的なニーズは相応に高かったようであるが、予算面の制約も強く、今回の採択率はかなり低位にとどまったようである。これで1次補正と予備費で計上した予算は使い切られたことから、現在指示が出ている3次補正予算で追加するかについての検討が行われている。なお、先立つ11月5日には、「海外サプライチェーン多元化等支援事業」について、二次公募・応募のあった64件について審査を行った結果、21件が採択されたことも公表されている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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