アフリカの角、ジブチ共和国の現状

アフリカの角、ジブチ共和国の現状

2020年9月11日に、政府は大塚海夫元海将を在ジブチ共和国(以下「ジブチ」という)日本大使に任命する人事を閣議決定した。自衛隊出身の大使就任は初めてである。ジブチには、海賊対処活動に当たる自衛隊の拠点がある。米国、フランス、中国等も海賊対処部隊などを派遣しており、ジブチとの緊密な連携や繊細な調整が求められる重要な戦略拠点である。河野前防衛大臣は、「任務を理解している大使が赴任されるのは非常に重要であり、ジブチの状況から判断すると現時点では適材適所の任命だ」と談話を発表した。ここで、ジブチの現状についてみてみよう。

ジブチは、アフリカ北東部のアデン湾の最西端に位置し、バブエルマンデブ海峡、紅海、スエズ運河を経由して地中海に通じる海上交通の要衝である。アデン湾では年間約2万隻の船舶が航行しており、そのうち約1,600隻が日本関係船舶である。2009年頃からアデン湾における海賊事件が年間約250件発生する危険海域となったため、商船等一般船舶の保護のため、関係各国は軍隊を投入し、被害の局限を図っている。我が国も2009年、「海賊対処法」に基づき、護衛艦2隻、P-3C哨戒機2機をもって護衛及び警戒監視任務を開始した。ジブチ国際空港では、米軍CJTF-HOA「アフリカの角統合共同部隊(陸、海、空、海兵隊隊員約4,500人)」が南側、フランス軍「第5海外混成連隊(陸、空軍約1,900人)」等が北側に常駐し、北東アフリカの安定と秩序の維持およびジブチ軍に対する教育・訓練などを実施している。また、空港駐機場には、ドイツ、イタリア、スペインが警戒監視任務のための航空部隊を派出し、海賊対処行動に当たっている。

ジブチは1977年にフランスから独立した。1991年にイッサ族(ソマリア系)とアファール族(エチオピア系)の武力衝突により内戦が勃発したが、1994年に政府は反政府軍と和平合意し、内戦が終結した。1999年にゲレ大統領が就任し、2016年に4選を果たして現在に至る。旧宗主国フランスを軸として、エチオピア、ソマリア等近隣諸国、及びサウジアラビアを中心とするアラブ諸国とのバランスのとれた友好・協力関係を築いている。ジブチの気候は極めて厳しく、夏場の気温は50℃を超え、年間降水量も200mmに満たない荒涼とした大地である。天然資源にも恵まれず、また農耕にも不適な環境である。

そのような中、「一帯一路」を提唱した中国は、アフリカ、欧州進出の橋頭保としてジブチに大規模な投資を行った。2018年7月に完成したアフリカ最大となる自由貿易区の一部は、世界屈指の交易ルートに位置する戦略的要衝という利点を生かし、貿易・物流のハブとなることを目指したものだ。総面積約48万(羽田空港の4倍の広さ)、総工費35億ドルの一大プロジェクトである。ゲレ大統領は、式典で「本プロジェクトにより国際通商貿易におけるジブチの地位を大幅に向上させるだろう」と事業を称えた。2016年には、ジブチ・エチオピア鉄道の全線電化事業が行われている。総工費は40億ドルであり、およそ750kmの両首都間を13時間で結ぶものだ。毎週8万トンの輸送量を見込んでいたが、現在は5千トンにとどまっている。今後は、この鉄道によりアフリカ内陸部の天然鉱物資源などを運び出し、内陸部に工業製品など供給する交易が予想され、中国のアフリカへの投資はまだまだ続くことが見積もられる。


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