日印の物品役務相互提供協定(ACSA)署名が意味するもの

日印の物品役務相互提供協定(ACSA)署名が意味するもの

9月9日、インドのニューデリーにおいて、鈴木哲駐インド日本大使とアジャイ・クマールインド国防次官は、「日・インド物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)に署名した。翌9月10日に、安倍晋三首相と、インドのナレンドラ・モディ首相が、30分間の電話会談を行い、ACSA署名を歓迎した。電話会談で安倍首相は、「両国の特別戦略的グローバル・パートナーシップをさらなる高みに引き上げることができた」と強調した。2018年10月に「海上自衛隊とインド海軍の間の協力の深化に係る実施取決め」が交わされており、実効性の高い協力関係が構築される見通しとなった。また、今回の日・インドACSA協定署名は、日・インドの2国間の連携強化のみならず、「自由で開かれたインド・太平洋構想」の実現に一歩近づくものであろう。

ACSAとは、後方支援の一環として、自衛隊と他国の軍隊の間で物資や役務を融通しあうための協定であり、食料、燃料、輸送、宿泊、通信、弾薬などを相互に提供することができる。国連平和維持活動、大規模災害発生時の人道的国際援助活動および共同訓練実施時に適用されれば、安全保障面の連携強化が期待できるだろう。日本はすでに米国、オーストラリア、英国との間で協定を締結、カナダとフランスとは署名済みであり、ニュージーランド、シンガポール、韓国と協定締結についての交渉が継続中である。ACSAは、米国と他のNATO軍との部隊レベルでの物品役務の相互融通の国際協定であり、1980年に米国議会で承認された合衆国法典を根拠とする。日本との間では、当時の橋本龍太郎首相とビル・クリントン大統領の日米首脳会談により協定交渉が推進され、1997年に協定が締結された。

ACSA協定締結に至る際、多くの締結国との間では、外交・防衛閣僚会議(2プラス2外交・防衛閣僚会議)が開催されている。この会議において、両国に関連する安全保障情勢の認識の共有、共同訓練の開催およびACSA協定の締結などが協議されているからであろう。1960年の「日米安全保障協議委員会会議」が「2プラス2外交・防衛閣僚会議」の最初の会議であったとみなされている。その後、アメリカに加え、オーストラリア、ロシア、フランス、英国、インドネシア、インドとの間で会議が開催されている。

中国は南シナ海、東シナ海への海洋進出を強めているが、日印ACSA協定の署名で日印の2国間関係の強化が実現すれば、日米豪印戦略対話(Quad:Quadrilateral Framework)の枠組みにおける4カ国のさらなる連携の強化も期待できるだろう。サウスチャイナモーニングポストは、「米国務省副長官のスティーブン・ビーガン氏が、8月31日、日米豪印戦略対話の4カ国関係を『北太平洋条約機構(NATO)に準じたものに拡張して公式化することを米国は目指している』と発言し注目を集めている」と報じた。さらに、「国際共同演習『マラバール』へのオーストラリアの参加を協議し、最終的にこの太平洋版NATO機構(仮称)構想にベトナム、韓国、ニュージーランドが加盟することを視野に入れているらしい」との報道もなされている。


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