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2020.06.22 安全保障

コロナショックで大企業がより強く、中小がより弱く

中村 孝也

第5回の東京商工リサーチ「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査結果が公表された。調査期間は5月28日~6月9日、有効回答1万8,462社を集計したものである。「新型コロナウイルスの発生は、企業活動に影響を及ぼしていますか?」という質問では、ほとんどの業種では「すでに出ている」という回答が多かったが、農・林・漁・鉱業、建設業、情報通信業では、相対的に「影響なし」という回答が多かった。

コロナショックは総じて中小企業により厳しいようだ。「貴社の2020年5月の売上は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?」という質問には9,952社が回答したが、87.4%が前年割れと、2月以降では最悪の結果となった。前年を100とした時の売上高(中央値)の推移は、2月が90、3月が85、4月が80、5月が70であった。大企業は2月が95、3月が92、4月が80、5月が80、中小企業は2月が90、3月が85、4月が80、5月が70であり、4月から5月にかけて、大企業の業況は底ばいで推移したように見受けられるが、中小企業の業況は底割れを余儀なくされたようだ。

「政府の支援策(新型コロナウイルス感染症特別貸付、セーフティネット貸付・保証)は利用しましたか?」という質問には、22.5%が「利用した」と回答した。前回調査の10.7%から増加しており、着実に利用は増えているようだ。規模別に見ると、中小企業の「利用」が25.7%であったのに対して、大企業は5.5%にとどまる。なお、前回調査では資金繰りに関する質問も含まれていたが、今回は見送られたようだ。

「国が示した新しい生活様式は、貴社の業績にどのような影響を及ぼしそうですか?」という質問には、「どちらともいえない」という回答が52.9%と最多であった。42.6%の企業が「マイナスの影響」と回答する一方、「プラスの影響」と回答したのは4.4%にとどまった。「マイナスの影響」は、大企業よりも中小企業の懸念が多い。東京商工リサーチは「対応に向けた設備投資やビジネスモデル転換、業務オペレーション転換について、中小企業ほど負担が大きく懸念している可能性がある」と解説している。「緊急事態宣言の解除後も在宅勤務・リモートワークを実施していますか(実施する予定ですか)?」という質問に対しては、31.5%が「しない」と回答。こちらも中小企業の方が「しない」という回答が多かった。



(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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