新型コロナパンデミック:第6波は来るのか? 東京慈恵会医科大学 浦島充佳

2021.10.25

新型コロナパンデミック:第6波は来るのか? 東京慈恵会医科大学 浦島充佳

緊急事態宣言が9月末で解除された。今まで、解除前後より患者数が増え始めるのが常だった。しかし、解除後3週間経った現在、人流が徐々に増えつつあるにもかかわらず着実に日々の検査陽性者数は下がり続けている(図1)。このことは人流抑制というよりは、ワクチン接種率を上げることが流行を抑えるのに最も効果的であることを示唆している。

図1.日本の新型コロナ流行曲線(Our World in Dataより著者がオリジナルで作成)

今晩(25日)から東京都では認証を受けた店が対象ではあるが、酒の提供時間の制限がなくなる。嬉しいニュースだ。だが、喜んでばかりもいられない。第6波が来るかもしれないからだ。

日本より早期にワクチン接種を開始し、制限を解除した国々では感染の再拡大をみている。イスラエルはブースター接種を開始して感染拡大を収束に導いた。一方、イギリス、アメリカ、シンガポールはブースター接種を導入したにも関わらず感染は未だに拡大している。何が違うのだろうか?ブースター接種を導入しても意味がないということか?これらの国々を分析することで、日本のとるべき戦略がみえてくるはずだ。

まずはイスラエルに注目する(図2)。 2020年12月からワクチン接種を開始したが、それより先に国内の大流行は始まっていた。1月17日には発症率、死亡率ともに日本の第5波の数倍にも及ぶ大きな波に飲み込まれたが、接種率が上がるとともに波は静まった。4月からの2~3か月間、これでコロナとの闘いは終わったかのように思われた。マスクなしで歓喜に沸くイスラエルの町の風景‐一瞬ではあったがポストコロナが垣間見えた。

しかし、6月後半から徐々に患者数は増え、7月から再び大きな波となってイスラエルを飲み込んだ。波と波との間隔はおよそ7~8か月。7月1日よりブースター(3回目)接種を開始。10月に入って急速に患者数は減少しつつある。

図2.イスラエルの新型コロナ流行曲線(Our World in Data より著者がオリジナルで作成)

イギリスでも9月よりブースター接種がはじまった(図3):”Our world in data” にはデータが無いためグラフ化できていない。しかし、6月より始まった感染拡大は10月に入ってもアップダウンを繰り返し、コントロールできているとは言い難い。

図3.イギリスの新型コロナ流行曲線(Our World in Data より著者がオリジナルで作成)

アメリカでは2020年12月よりワクチン接種が始まったが、5月より接種率が鈍化し、10月22日で57%、ブースター接種が3.6%の状態である(図4)。接種率が不十分なためか、昨年秋から始まった感染拡大がワクチン接種により収束の方に向かうように見えたが、ある程度抑えが効いた期間は夏の1~2か月だけだ。その後に始まった流行でも発症率に比して死亡率が高いのはワクチン接種が十分機能していないサインかもしれない。

図4.アメリカの新型コロナ流行曲線(Our World in Data より著者がオリジナルで作成)

シンガポールでは10月22日時点で、2回接種が80%、ブースター接種が11%に達した。それでも感染は急拡大している(図5)。今まで優等生であったシンガポールで何故?しかも、現在の発症率、死亡率はともに日本の第5波時よりもはるかに高い。

図5.シンガポールの新型コロナ流行曲線(Our World in Data より著者がオリジナルで作成)

現在旧ソビエト連邦を中心とする国々で急速に感染が拡大している(図6)。これらの国々では、ワクチン接種率が低い傾向にある(図7)。だが、それだけでこの急拡大を説明できるものではなさそうだ。何故ならロシアやウクライナよりリトアニア、ラトビア、エストニアでワクチン接種が比較的高いのに、発症率も高いからだ。デルタ株がさらに進化したデルタプラスがロシアで報告された。デルタ株は非常に感染力が強いが、デルタプラスはさらに15%、感染力を強めたとのニュース報道もある[1]。昨年秋にイギリスでアルファ株が発見され、春にはインドでデルタ株が発見された。そろそろ感染力を増した変異株が出現しても不思議ではない。

図6.旧ソビエト連邦の人口100万人当発症率(7日間移動平均)(Our World in Data より)
図7.旧ソビエト連邦のワクチン接種の累積完了率(%)(Our World in Data より)

第6波はあるのか?あるとすればいつ?

mRNAワクチンにより得られた中和抗体はおよそ6か月で、特に高齢男性で減衰することが報告された[2]。日本では5月から7月、65歳以上の高齢者に集中的にワクチンが接種された。したがって、ワクチンの効果が11月から1月にかけて切れだすものと思われる。しかも冬は肺炎が重症化しやすい。このままでは今冬、12月から2月に第6波が来る可能性が高い。一方、8月の第5波から6~8か月空けて第6波が到来すると仮定すれば2月~4月の可能性もある。第6波が来ればインフルエンザは流行しないであろう。

ワクチン接種先行国で成否を分けたものは何か?

イスラエルでは2回のワクチン接種後5か月を経た60歳以上の高齢者にブースター接種を7月1日より開始した。波が始まってまもなくのことである。10月22日は44%に至った。一方、アメリカやシンガポールでは流行が始まってかなり経ってからブースター接種を開始している。これでは遅すぎる。しかも、現時点でのブースター接種率はそれぞれ3.6% と11%とまだまだ低い水準だ。多くの高齢者は守られていない。

イスラエルのデータを詳細にみるとブースター接種が33%、すなわち3人に1人を超えたところで発症率が減少に転じている。論文では、ブースター接種をしていない人と比較してブースター接種をすることにより、感染を9割近く、重症化を8割抑えている[3]。イスラエルは最も早くブースター接種を開始したが、さらに1~2か月早ければ、死亡者数はもっと少なかったに違いない。

対岸の火事に学び、日本は一刻も早く、遅くとも第6波が来る前にブースター接種を医療・介護関係者、高齢者や基礎疾患のある人から開始するべきだ。

浦島充佳

1986年東京慈恵会医科大学卒業後、附属病院において骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。93年医学博士。94〜97年ダナファーバー癌研究所留学。2000年ハーバード大学大学院にて公衆衛生修士取得。2013年より東京慈恵会医科大学教授。小児科診療、学生教育に勤しむ傍ら、分子疫学研究室室長として研究にも携わる。専門は小児科、疫学、統計学、がん、感染症。現在はビタミンDの臨床研究にフォーカスしている。またパンデミック、災害医療も含めたグローバル・ヘルスにも注力している。小児科専門医。
近著に『新型コロナ データで迫るその姿:エビデンスに基づき理解する』(化学同人)など。


[1] FNN プライムオンライン“デルタより15%感染力強い”新たな変異株「AY.4.2」 ロシアで複数の感染確認

[2] Levin EG, Lustig Y, Cohen C, Fluss R, Indenbaum V, Amit S, Doolman R, Asraf K, Mendelson E, Ziv A, Rubin C, Freedman L, Kreiss Y, Regev-Yochay G. Waning Immune Humoral Response to BNT162b2 Covid-19 Vaccine over 6 Months. N Engl J Med. 2021 Oct 6:NEJMoa2114583. doi: 10.1056/NEJMoa2114583.

[3] Bar-On YM, Goldberg Y, Mandel M, Bodenheimer O, Freedman L, Kalkstein N, Mizrahi B, Alroy-Preis S, Ash N, Milo R, Huppert A. Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel. N Engl J Med. 2021 Oct 7;385(15):1393-1400. doi: 10.1056/NEJMoa2114255.


 
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