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2021.11.12 コラム

「まだ見ぬ幸せな未来の実現」に向けて
連載コラム:日本のペイパル・マフィア(第3回)

藤野 英人

本連載で最初に触れたように、2000年頃の日本では、最優秀層は大企業か官庁に進むのが当たり前でした。一方、アメリカでは2000年の段階で、最優秀層が起業したりベンチャーに入ったりしており、私はそれが現在のGAFAMの台頭につながったと考えています。しかし現在の日本ではベンチャーブームと言ってよい状況にあり、スタートアップを取り巻く環境も変わってきました。数多くのスタートアップ起業家を間近に見てサポートしてきた「千葉道場」の千葉功太郎さんも、ここ5年ほどで環境が激変し、起業家の裾野も大きく広がったと感じているといいます。

「これまでは、スタートアップといえば野武士のように強く特殊な人がつくる時代でした。しかし今は、東大生が普通に人生の選択肢として卒業後の起業を選ぶ時代になっています。日本のスタートアップ・エコシステムもこの5年間で急激に立ち上がっており、数字で見ると2020年だけでスタートアップがおよそ4600億円(※1)も資金調達しているんです。アメリカや中国に比べればけた違いに小さいものの、5~6年前はほぼゼロだったと考えれば、著しい成長を遂げているといえます」(千葉さん)

千葉さんが初めてエンジェル投資をしたのは2015年、東証一部上場企業であるオンラインゲーム開発・運営会社のコロプラの副社長だったときのことでした。その当時は「エンジェル投資家」という言葉そのものが日本ではまったく知られていなかっただけでなく、日本では上場企業の経営陣は自社の経営に専念すべきだという考え方が「常識」だったといえます。「個人での投資活動に対する理解はまったくなかった」(千葉さん)のです。しかしそれから6年が経った今、経営者がエンジェル投資をすることは日本でも当たり前になっています。このような「常識」の変わりようからも、スタートアップ起業家を取り巻く環境の変化を強く感じ取ることができるでしょう。

【日本のペイパル・マフィアに聞く6つの質問】

①日本にも、米国のようにベンチャーのエコシステムが発展していくと思いますか?

はい。遅ればせながら、かつ規模も小さいながらも、着実にこの10年でも激変してきてます。単なる後追いではなく、日本独自の進化もしている実感があります。

②日本のベンチャー市場の発展にエンジェルが果たしていくべき役割をどう見ていますか?

とても大きいです。事業などで成功された個人が、もっとたくさんエンジェル投資家としてスタートアップを支援していき、その裾野がどんどん広がる近未来を期待しています。

③今後、米国のペイパル・マフィアのような、起業家とエンジェルを横断する勢力は形成されるでしょうか?

千葉道場コミュニティ及び千葉道場ファンドが、日本版の一つの形になっていけたらうれしいですね。

④ベンチマーク、もしくは注目している人や組織、団体を複数教えて下さい。

イーロンマスク、ヘンク・ブラウアー・ロジャース、ジェイソン・マッケイブ・カラカニス、ユーグレナ社、リバネス社。

⑤あらためて伺います。エンジェルやベンチャー投資の魅力は?

まだ見ぬ幸せな未来の実現。

⑥今後の抱負を教えて下さい。

「Catch the Star」を千葉道場のミッションとして、それぞれの産業分野でのコロナ禍なDXを促進させ、来るべき未来の幸せを追求していきたいです。


 ※1:(参照元)日本最大級のスタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」(イニシャル)、2020年通期の国内スタートアップ資金調達状況をまとめた『Japan Startup Finance 2020

藤野 英人

レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役 会長兼社長 最高投資責任者(CIO)
野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。「ひふみ投信」シリーズファンドマネージャー。 投資啓発活動にも注力する。JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師。一般社団法人投資信託協会理事。

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