◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の巻頭特集「エンジェル投資家 Bitcoin.com CEO ロジャー・バー氏インタビュー」の一部である。全5回に分けて配信する。
黎明期といえる2011年頃からビットコインの所有を始め、仮想通貨関連スタートアップのエンジェル投資家として業界をサポートしてきた、ロジャー・バー氏にお話を伺った。ロジャー・バー氏は仮想通貨ニュースサイトおよび仮想通貨のウォレット事業やクラウドマイニングサービスなどを多角的に手掛けるBitcoin.comのCEOであり、これまでに海外送金に特化した決済システムを提供するRipple社、仮想通貨のオンラインウォレットであるBlockchain.infoとBitpay、仮想通貨取引所Krakenなどに100万ドル以上の投資を行っている。またバー氏は現在、ビットコインの取引処理能力を巡る課題解決策をめぐって2018年8月にビットコインから分岐することで新たに誕生したビットコイン・キャッシュ(BCH)という仮想通貨の普及活動に取り組んでいる。
―個人投資家に、もし10年後を見据えてアドバイスするとしたらなんとおっしゃいますか?
10年は、特にイノベーションの速度が非常に速い仮想通貨やブロックチェーン界隈では非常に長い時間といえます。そのため具体的なことはいえませんが、私のポリシーとしてはやはり「実際に利用できる、人々にとって便利であるものに注目する」ということです。なぜなら、技術とは人々のために進化するものであって、技術それ自身の革新性を極めることが目的となってユーザーに利便性を提供しないような技術というのは本末転倒だと思います。
また、もしも機関投資家として投資するのであれば、それが実際に多くの人々の生活に役に立つ実用的なプラットフォームとなるものを選ぶことが重要だと思います。
たとえば、Facebookはソーシャルメディアのプラットフォームですね。Twitterもまたソーシャルメディアのプラットフォームです。UberやLyftはライド・シェアのプラットフォームです。Airbnbはハウス・シェアのプラットフォームといえます。仮想通貨は、価値(バリュー)の交換プラットフォームといえるでしょう。投資家は、大勢が利用すると見込まれるサービスを提供するプラットフォームに投資したいものです。私は、実用的なプラットフォームの選択は非常に重要なものだと考えます。
―バー氏自身が、仮想通貨決済の利便性が高まるよう積極的に動かれていらっしゃると思います。仮想通貨関連企業が数百社設立されるなど仮想通貨事業を地域に根づかせることに積極的なスイスのツーク市は、シリコンバレーならぬ「クリプトバレー(仮想通貨の谷)」と呼ばれていますが、今後このツーク市のような“新たなクリプトバレー”を目指す韓国・済州島の地方政府がバー氏に協力を要請したという件について教えてください。
先日カンファレンスで韓国を訪問した際、済州島の地方政府からの要請で30分ほど政府幹部とミーテイングを行いました。そこで、ビットコイン・キャッシュの利用を体験してもらい今後、私がCEOを務めるBitcoin.comでは済州島の様々な場所でビットコイン・キャッシュ決済を導入できるようにサポートしていくと約束しました。済州島は今後、ビットコイン・キャッシュの決済導入の先進地域となると思います。
訪れるまでは知らなかったのですが、済州島は韓国の他の地域とは異なる統治のされ方をしており、韓国と異なる政策決定を行うことができます。今後、地方政府が済州島を「新たなクリプトバレー」となるべく注力していく方針であるため、ビットコイン・キャッシュは実際に広く導入されることになるでしょう。ビットコイン・キャッシュを利用したいという人にとって非常に魅力的な場所になると思います。
また済州島は、韓国から離れて独自の法規制を敷くことが可能であるという利点を生かして新しい企業誘致のための制度を整備していく構えだと聞いています。Bitcoin.comはビットコイン・キャッシュATMの設置や、決済導入店舗の拡大、また空港でのビットコイン・キャッシュ受け入れなどを進めて、魅力的な環境整備に取り組む予定です。
ビットコイン・キャッシュはまた、もし早ければ年内にも日本に数万店舗を展開するコンビニエンス・ストアで決済を受け付ける方向で検討が進められています。もしも実現すれば、普及への大きな一歩となると思います。「お金」の形を変えるという大きなポテンシャルを持つ仮想通貨とその関連技術には、大きな可能性があると信じています。