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2021.02.18 外交・安全保障

「投資立国日本」の中身

中村 孝也

2020年の日本の経常収支は17兆6,976億円の黒字となった。黒字幅は前年から14%縮小したが、これはサービス収支が赤字に転落したことの影響が大きい。コロナショックの影響を受けて、旅行収支は8割減の5,621億円と黒字幅を大きく縮小させた。貿易収支は3兆457億円の黒字と前年から2兆6,645億円黒字幅が拡大した。品目別に見ると、鉱物性燃料が収支を改善させた一方、一般機械、輸送用機械が収支を悪化させている。コロナショックによる世界的な景気後退や原油安の結果、日本の輸出、輸入はともに落ち込んだが、トータルでは原油安の影響が強めに出たと見られる。
経常収支黒字の主役は第一次所得収支である。その第一次所得収支は20兆7,175億円の黒字と、黒字幅は前年比3.2%縮小した。証券投資収益の黒字幅が若干縮小したが、直接投資収益は約11兆円とほぼ横ばいであったことから、第一次所得収支の水準は大きく変わらなかった。2011年以降は基本的に、第一次所得収支の黒字幅が経常収支黒字を上回る状況が続いており、「投資立国」という姿が見て取れる。

その第一次投資収支であるが、以前は証券投資収益が直接投資収益を大幅に上回っていた。しかし、海外子会社等からの配当金の受取額が増加したことなどから、2013年頃から直接投資収益の黒字幅が拡大してきており、このところ両者はほぼ同規模となっている。直接投資収益を地域別に見ると圧倒的にアジアが大きく、業種別には卸売・小売、輸送機械器具などの構成比が大きい。「投資立国」の半分は直接投資収益であり、その直接投資収益は「自動車で稼ぐ日本」といった日本企業のビジネスモデルの反映でもある。日本企業が稼げなくなっていくのであれば、直接投資収益にも影響が及び、それは「投資立国」という姿にも影響を与えてしまう可能性も考えられる。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

中村 孝也

株式会社フィスコ 代表取締役社長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、暗号資産(仮想通貨)などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

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