昨日、首都圏の1都3県を対象として緊急事態宣言が発令された。日本ではコロナ感染拡大に歯止めがかからなくなってきたが、世界でも新規感染者数は引き続き高止まりしている。期待のワクチン接種にも時間がかかる。仮に現状の接種ペースが続けば、人口の60%が接種するまでに、アメリカは1,900日ほど、イギリスは800日ほど要することになる。改めてコロナ感染拡大継続による経済へのダウンサイドリスクを確認しておくことは意味があろう。総じて、新興国へのダメージがより大きそうである。
IMF(国際通貨基金)によるダウンサイドシナリオでは、ワクチンの早期導入の見通しが後退することが想定されている。家計支出が減少し、家計貯蓄率が先進国の中央値で約2%ポイント上昇する一方、企業の廃業などから、2021年後半までに企業の資本ストックが1%減少する。社債と株式のリスクプレミアムが2021年を通じて50ベーシスポイント上昇し、世界の株価と非食料品価格がそれぞれ15%と10%下落する。
そのような前提のもとでは、ベースラインシナリオと比較して、世界GDPが2021年に2.5%ポイント、2022年に1.5%ポイント、それぞれ下振れると見込まれている。ショックのピーク時における世界GDPの水準はベースライン比4.5%近く低下する。ほとんどの主要国と地域でほぼ同様の影響が発生するが、欧州と北米はアジア太平洋よりもより大きな打撃を受ける。貿易依存度が高い小規模な開放経済圏や、金融政策の余地が限られていたり、政策的なオフセットが比較的少ない国々で悪影響は大きいと見込まれている。
OECD(経済協力開発機構)によるダウンサイドシナリオでは、ウイルス対策の進展がベースラインで想定したよりも遅くなることが想定されている。接触集約的なセクターの活動の悪化を招き、関連する所得効果が他のセクターに波及し、これらの内需効果は、貿易を通じて増幅される。金融情勢も引き締まり、先進国では企業のスプレッドが上昇し、新興国では企業とソブリンのスプレッドが拡大する。活動低迷がさらに長期化すると、生産性資本の喪失、失業率の持続的な上昇、一時的な生産性の低下など、経済の供給能力にさらなる持続的なダメージが生じるが、これらの傷跡効果は2022年以降に発現すると想定されている。
ダウンサイドシナリオでは、2021年の世界の成長率はベースラインよりも約3%ポイント低下し、2025年時点でも世界GDPの水準はベースラインを約1.5%下回る。財政余裕度が限られることから、新興国は先進国よりも悪影響を受けやすく、新興国への悪影響は先進国の約2倍の規模と見込まれている。
(株式会社フィスコ 中村孝也)